こんにちは、ビバエル代表医師のオリガです。

毎日たくさんの女性が、当院をオンラインで受診されます。お話をうかがうなかで、よく耳にするサプリメントがあります。エクオールです。

「もう2年くらい飲んでいます」
「最初は効いていた気がします」
「友人にすすめられて、とりあえず何かしていたくて」

こういうお声を、本当によく聞きます。

先に申し上げておくと、私はエクオールを危険なものだとは思っていません。飲んでいる方に「やめてください」と言うこともありません。

ただ、期待されている効果の大きさと、実際にわかっていることの間には、けっこうな距離があります。そのことを、今日は正直にお話しさせてください。

その前にひとつだけ整理させてください——エクオールのサプリメントは、大豆食品そのものではありません。豆腐や納豆のような日常の大豆とも別物で、大豆から作られる「エクオール」という成分だけを濃縮・抽出したものです。この違いは、あとの話で効いてきます。

エクオールとは何か、を短く

大豆に含まれるイソフラボン(ダイゼイン)が、腸内の細菌によって作りかえられてできる物質です。女性ホルモンであるエストロゲンと構造が似ていて、体のなかで似た働きをすると考えられています。

大事なのは、大豆を食べれば誰でも作れるわけではないという点です。作るための腸内細菌を持っている人は、日本人でおよそ半数、欧米人では3割ほどとされています。

海外の学会は「すすめません」と書いています

ここからが、今日いちばんお伝えしたいことです。

アメリカの閉経学会(The Menopause Society)は、ホルモン以外の治療について、2023年にまとまった見解を出しています。そのなかで、大豆食品も、大豆の抽出物も、そしてエクオールも、ほてりなどの症状に対して「推奨しない」に分類されています。

理由は「効果を否定するデータがある、もしくはデータが十分でない」から。

同じ文書のなかで「すすめられる」に入っているのは、認知行動療法、臨床催眠、一部の抗うつ薬、ガバペンチン、そして新しく登場した非ホルモン薬(日本ではまだ非承認)などです。そして結論として、ほてりに対していちばん効果があるのはホルモン補充療法であると、はっきり書かれています。

日本で、これだけ多くの方が飲んでいて、婦人科でもすすめられることのある成分が、海外では「推奨しない」に入っている。このギャップを、私はずっと不思議に思ってきました。

なぜ、こんなに評価が違うのか

いくつか理由があると思っています。

ひとつは、対象になっている人たちの体質の違いです。

エクオールを作るには、大豆に含まれる成分を「エクオール」に変換してくれる特定の腸内細菌が必要です。この腸内細菌を持っている人の割合が、日本人女性ではおよそ4割から5割、欧米人では2〜3割と、はっきりした差があります(日本人看護師約4,400人を調べた国内の大規模調査でも、41.5%と報告されています)。

海外の学会が「効かない」と判断した試験の多くは、この腸内細菌をもたない人が半分以上を占める欧米の女性を対象にしています。大豆を口にしても体内で活性型のエクオールに変わらない人たちに大豆サプリを飲ませても、効果が出にくい——これはむしろ当然のことです。

日本人はこの点で条件が違いますから、大豆イソフラボンを摂ることで少し楽になる方がいらっしゃる——それは十分あり得ることだと思います。ただ、それでも次にお話しする「研究の作られ方」の問題や、効果の大きさが中くらいかそれ以下という限界は、変わらずについてまわります。

もうひとつは、研究の作られ方です。エクオール研究のかなりの部分が、日本国内で比較的小規模に、しかもエクオールサプリを開発している関連企業がかかわる形で行われています。海外の独立した研究チームによる大規模検証は、まだ十分に積み上がっていません。

そして、測っているものの違いです。日本の研究の多くは「症状の点数」で評価しています。一方、海外の学会が重視するのは「ほてりが1日に何回起きたか」といった、より動かしにくい数字です。点数は、期待や気分の影響を受けやすいのです。

では、まったく効かないのか

そう言い切るのも、また不正確です。公平に、効果を示したデータもご紹介します。

エクオールを自分で作れない閉経後の女性を対象に、1日10mgを12週間続けた研究では、首や肩のこりについて、飲まなかった方と比べて明らかな差が出ています。複数の研究をまとめて解析した報告でも、ほてりの程度が軽くなったという結果が出ています。

ただ、この「まとめた解析」に含まれている研究は5つ、合わせて700人あまり。しかもそのうち2つでは、はっきりした差は出ていません。医学の研究としては、圧倒的に少ない人数です。

骨についても、骨が溶けるスピードの指標が下がったという報告はあります。ただ、正確に付け加えると、そのデータの多くは「大豆イソフラボン全般」の研究で、エクオールに絞った直接の根拠はもっと薄いのです。そして何より、どの成分を使ったとしても、骨折そのものを減らしたというデータは、今のところありません。ここは大きな違いです。

そして、いちばん大切なこと——ホルモン補充療法と直接比べて「同じくらい効く」と示した研究は、ひとつも存在しません。

また、閉経後の生活の質(QOL)を改善するという点でも、エクオールを含む大豆イソフラボンサプリの効果を支持する現時点でのエビデンスはありません。

つまり、効果は「ある」のですが、そこには必ず但し書きがつきます。効果の大きさは中くらいかそれ以下で、対象を絞った条件で、しかも症状そのものではなく代わりの指標で測ったもの、という但し書きです。

安全性について、知っておいていただきたいこと

「自然のものだから安心」とは、私は言いません。

日本の食品安全委員会は、大豆イソフラボンについて、1日の摂取量の上限の目安を定めています。食品とサプリを合わせて70〜75mg/日、そのうちサプリからは30mg/日を超えないように、というものです。

この目安の根拠のひとつになっているのが、海外(イタリア)の研究です。閉経後の女性が高用量(1日150mg)を5年間飲み続けたところ、子宮内膜が厚くなる病気(過形成)が増えた——がんではないものの——という報告でした。

念のためですが、この上限はあくまで濃縮された大豆イソフラボン/エクオールのサプリメントや強化食品を対象にした話です。豆腐や納豆といったふだんの大豆食品を制限してくださいという話ではありません。ただし、妊娠中の方、お子さんについては、データが十分でないことから、ふだんの食事に上乗せして濃縮サプリをとることはすすめられない、とされています。

お金の話もします

これは誰もあまり言わないのですが、大事なことだと思うので書きます。

エクオールのサプリメントは、だいたい月に3,000〜5,000円ほど。1年で約36,000〜60,000円になります。

日々の値上がりに1円でも削るのであれば、そのお金は、本当に効果がある、あなたの生活の質を改善してくれるものに使ってほしい——私はそう願っています。

私が診察室でお伝えしていること

まとめると、こういうことをお話ししています。

1. つらい症状があるなら、まずホルモン補充療法や漢方が使えるかを確認しましょう。使えない理由がないのであれば、順番としてはこちらが先です。人生を取り戻すのに、これがいちばん効きます。

2. それでもサプリメントを選ぶこと自体は、悪いことではありません。ホルモン補充療法を希望されない方、体質的に使えない方にとって、選択肢のひとつではあります。可能であれば、濃縮サプリではなく食事から大豆をとることをおすすめしたいところですが、サプリを選ぶ場合も同じ考え方で——「みんな飲んでるから」「念のため」ではなく、自分が本当につらいと感じている症状に合ったものを選んでください。

3. 飲む前の「作れるかどうか」の検査は、必ずしも必要ありません。エクオールのサプリメント(S-エクオール)を直接飲む場合は、腸内細菌でご自身が作れる/作れないに関わらず、報告されている効果はある程度共通しています。ですから、検査で「作れる」と出たから飲む・「作れない」と出たから飲む、という切り分け方はあまり意味を持ちません。作れると出ても症状が軽いとは限りませんし、迷ったときの決め手にはならないのです。

4. 始めるときに、やめどきを決めてください。「3ヶ月飲んで何も変わらなければ、いったんやめて様子を見る」。これを最初に決めておくだけで、なんとなく5年、ということがなくなります(そして家計も助かります)。

5. いま飲んでいて調子がよい方に、やめるようにとは言いません。合っている方は確かにいらっしゃいます。そのまま続けていただいてかまいません。ただ、「いちばん効く可能性の高い治療」を、それによって先延ばしにしないでください。期待は現実的に。それだけです。

最後に

私はサプリメントを否定したいのではありません。

更年期のあいだ、体調と向き合うために使える時間もお金も、限られています。だからこそ、確からしいものから順番に使ってほしい——というだけのことです。

いま飲んでいるものが自分に合っているのかどうか、一度立ち止まって考えたい。そう思われた方は、どうぞご相談ください。「やめるべきかどうか」も、立派な相談の理由です。

一人で判断しなくて大丈夫ですよ。

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※本コラムは一般的な医療情報の提供を目的とし、個別の診断・治療の代替となるものではありません。症状にお困りの方は医師にご相談ください。

参考文献

  1. 米国閉経学会「2023 Nonhormone Therapy Position Statement」(ほてり等に対する非ホルモン療法の総括、大豆・エクオール製品の推奨度を含む) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37252752/
  2. エクオール直接補充による更年期症状のシステマティックレビュー・メタ解析(Daily JW et al., 2019, J Med Food) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30592686/
  3. 日本人non-producer女性へのS-エクオール12週間投与ダブルブラインドRCT(Aso T et al., 2012, J Womens Health) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21992596/
  4. 日本人女性4,412名を対象としたequol producer割合の大規模調査(Ideno Y et al., 2018, PLoS ONE) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6062095/
  5. 大豆イソフラボンサプリと閉経後QOLに関するシステマティックレビュー(2019) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31057646/
  6. 食品安全委員会「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」(2006年5月/1日摂取上限70〜75mg・サプリ由来30mgの根拠を含む) https://www.fsc.go.jp/iken-bosyu/pc_isoflavone180309_4.pdf