以前の記事で更年期のデリケートゾーン(フェムゾーン)の悩みとケアの必要性についてお話ししました。

今回は、尿漏れ対策としても期待できる「骨盤底筋を鍛えること」についてお伝えします。

骨盤底筋とは?

骨盤底筋とは、骨盤の底にハンモックのように内臓を支えている筋肉の総称で、次のような役割を担っています。

  • 骨盤内臓器(膀胱、子宮、直腸など)を支える
  • 尿道を締めて尿漏れを防ぐ
  • 排便をコントロールする
  • 腹圧を調整する

骨盤底筋がゆるむと尿や便のコントロールができなくなり、尿や便が漏れるようになってしまいます。

尿漏れとは

「尿漏れ」について話すのは、なかなか抵抗があるかもしれませんが、実は多くの女性が同じ悩みを抱えています。

もし読者の中にも悩んでいる方がいらっしゃったら、あなただけではないですよとお伝えしたいと思います。

尿漏れの程度や割合

尿漏れの程度は、人それぞれです。

咳やくしゃみなど、腹圧がかかった時にちょっと漏れる人から、尿が溜まってくると我慢できずに多量に漏れてしまう人など、骨盤底筋のゆるみ具合によって異なります。

また、20代から60代の日本人女性4万人に聞いた尿漏れに関する調査では、どの年代でも尿漏れ経験者は50%以上と言われています。

これは現代の生活様式にも影響を受けています。
和式の便器を使用することはほぼなくなり、掃除機やモップの普及で雑巾がけのような体勢もほとんどしなくなりました。
昔の生活様式で暮らしていた時代に比べて、骨盤底筋を鍛える動きが日常生活から無くなっていることも理由のひとつだと考えられます。

また、出産によって骨盤底筋は傷ついたりゆるんだりするため、若い世代でも出産経験者は尿漏れを起こす人の割合が大きくなります。

お湯漏れ

また骨盤底筋がゆるんだり、膣の筋肉が弱くなることで、尿漏れと同様に「お湯漏れ」という症状も起こります。

これは入浴時やプールなどで膣に水やお湯が入ってしまい、しばらくたってから膣から出てくる現象です。

骨盤臓器脱について

骨盤臓器脱とは

骨盤底筋のゆるみが進行すると、骨盤内の臓器が膣壁と共に膣口から出てきてしまうことがあります。これを骨盤臓器脱といいます。

正しい位置にあったはずの臓器が下がってきて膣の外に出てしまうのですが、痛みがないために「夕方になると股の間に何か挟まっている」と言って初めて受診することも珍しくありません。

臓器脱で出てくる臓器の割合は、多い順から膀胱、直腸、子宮の順番です。

たとえば、膀胱を体内に戻す手術をしても、次は直腸や子宮が下がってきて、再び手術を受けるというケースもあります。

骨盤底筋のゆるみは、このような大変な状況にも繋がります。

骨盤臓器脱を起こす割合

出産経験者の44%が、骨盤臓器脱のなんらかの症状がでることがわかっています。

日本産婦人科学会での発表によると、80歳までに尿漏れや骨盤臓器脱で治療を受ける割合は11.1%です。

10人にひとり以上って結構怖い数字ですよね。

骨盤底筋体操

骨盤底筋を鍛えると、このようなメリットがあります。

  • 尿漏れを防ぐ
  • 尿漏れを治す
  • 下腹部が凹んでスタイルが良くなる
  • 骨盤臓器脱を防ぐ
  • 骨盤内の血流が良くなることで生理痛の改善が期待できる

骨盤底筋は、身体の一番底で内臓の重みに耐えている筋肉なので、鍛えなければ年齢とともにどんどん緩んでしまいます。

男女問わずみなさんに必要な体操です。

骨盤底筋体操をすることで、尿漏れやお湯漏れを改善し、骨盤臓器脱を予防しましょう。

骨盤底筋体操の方法

  • 骨盤をまっすぐにして立つ。
    座っている場合は、骨盤を立てる。
    ベッドや床に横になっている場合には仰向けになり、膝を立てる。
  • 息を吐きながら、尿やおならを我慢するイメージで骨盤底筋をキュッと締める。
  • このときに下腹部が膨らまないように注意する。
  • 息を吐き終わったら、反動で勝手に息を吸いこむ動作にともない、自然と骨盤底筋がゆるむ。

呼吸に連動して横隔膜が上下するので、呼吸と併せて「息を吐くときに締める」のがポイントです。
何かをしながらでもできる体操なので、ぜひ一日の中で何度も繰り返して行ってみてください。ビバエルのカウンセリングの際に一緒にやることもあります。

また、骨盤底筋は姿勢が悪くてもゆるんできます。日頃から、姿勢にも気をつけていきましょう。

幸せな一生を送るために

骨盤底筋がゆるむと、尿や便のコントロールが効かなくなってしまいます。
そして、結果的にオムツを使用することになって、自信や活力を失っていく方々を見てきました。

いつまでもご自分に可能性を感じながら、人生の最期までワクワクした毎日を過ごせるように、骨盤底筋体操を日々の生活の中に取り込んでいきましょう。