40代に入ると、多くの女性がこれまで感じたことのないほどの異常な疲れを感じるようになります。この記事では、そんな40代女性の異常な疲労の原因と対策について、説明します。

年齢のせい?休んでも回復しない「疲れ」
「寝たのに全然疲れがとれない」「夕方になると疲れて動けなくなる」
20〜30代には感じなかった疲れを、40代になって感じ始める人も多いはずです。
もちろん、一日中走り回った日は、クタクタになって夜は倒れるように寝ることもあるでしょう。しかし、日常生活を過ごすだけで動けないほどダルくなってしまったり、夜きちんと休んでも回復しないのは、単なる疲れではないことがあります。
異常な疲労がある人には、こんな症状があります。:
- いつも疲れている感じがする
- 夜休んでも朝だるいと感じる
- 夕方になると疲れによって動けなくなる
「異常な疲れ」の原因
疲労の原因は1つに絞り切ることは難しく、いくつもの要因が重なり合って起こることも多くあります。今回は原因を6つに分けて解説します。
- ホルモン量の変化
- マルチタスクによる脳疲労
- 睡眠不足
- 代謝の低下
- 隠れ貧血
- その他の健康上の要因
1. ホルモン量の変化
多くの女性は40代半ばから、更年期を迎えます。
この期間に特に女性ホルモンは大きく変動し、このホルモン量の変化こそが、エネルギーや気分に影響を与えます。更年期に入り、女性ホルモンが減少すると、エネルギー切れを感じたり、だるいなどの疲労感につながることがあると言われています。
最近の研究では、40代で感じ始める異常な疲労は、更年期の始まりのサインの1つとも言われています。
Tips
85%の女性が閉経前5年の間に"疲労感"を経験しており、女性ホルモン量の変化が、"活力"や"疲れやすさ"に影響を与えていることが明らかになっています。(「Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」)
2. マルチタスクによる脳疲労
40代の女性は、仕事、家庭、自己啓発など、人生で一番忙しい時期とも言えます。
特に女性の社会進出が進み、「仕事上の責任やストレスの増加」「職場での競争や成果を求められるプレッシャー」など、仕事に関する悩みが尽きない女性も多いでしょう。
一方でまだまだ日本国内では家事・育児は女性が担当する比率も高く、仕事と家庭の両方で続く膨大なタスクに悩まされる人も少なくありません。
このように、複数の役割を同時にこなさなければいけない状況が脳へ大きな負担となり、「異常な疲労」の原因になるとされています。
例えば「高校生の子育てと、仕事の両立」「高齢の親の介護と、仕事の両立」「妻として夫を支えながら、上司として部下を支える」など。女性の持つ複数の役割と、それに紐づく膨大なタスクを常に考え、実行し続けていると、心身ともに消耗してしまうのです。
Tips
複数の責任を同時こなすことによる長時間の脳への負担が、精神的な疲労や意思決定能力への影響を与え、全体的な疲労を増大させることが示されています。(2021年に発表「Frontiers in Human Neuroscience」に掲載)
3. 睡眠不足
一般的に女性は男性よりも長い睡眠を必要とすると言われています。
しかしながら、40代に入ると女性は以下のような理由で十分な睡眠が得られないことがあります。
- 女性ホルモンが減少することにより、寝つきが悪くなったり、夜中に眼が覚めてしまう
- 子育てや家族のお世話をする必要がある
- レストレスレッグス症候群などの睡眠障害を引き起こす疾患の発症
当然ながら、十分な睡眠が取れていないと、疲れが残りやすく、昼間の活動に必要なエネルギーが回復できていないと感じることがあります。
Tips
40代の女性は早寝早起きの傾向があることが分かっています。これが自分の本来活動したい時間帯や、仕事のスケジュールと噛み合わないと、結果として疲労の一因となると指摘されています。(2019年発表(「Sleep」誌に掲載)
4. 代謝の低下
40代になって、これまでと同じ食生活を続けているだけなのに、太りやすくなったと感じることがありませんか?
これは代謝(たいしゃ)が変化しているためです。代謝とは、食事などで得る栄養素をエネルギーに変換し、そのエネルギーを利用して体の成長、修復、維持を行うプロセスのことを言います。
40代半ばになると、この代謝が徐々に遅くなります。代謝が遅くなることによって、エネルギーが不足し、回復がしづらくなります。
つまり、代謝効率の低下によって異常な疲れを感じることへと繋がることがあるのです。
5. 隠れ貧血
重い月経出血は鉄欠乏性貧血の原因となり、慢性的な疲労につながることがあります。多くの女性は月経について誰かに話をしたりしないので、自分の月経量が人より多いか少ないかを知っている人は多くありません。しかし実際には、月経過多が原因で貧血症状がある人が一定数いるのです。
重い月経出血の指標として、以下のようなものがります。
- 月経中に3cm以上の血の塊が出る
- 日中に夜用の生理用品を使用しなければならない
- 1~2時間ごとに生理用品を交換する必要がある
- 出血が7日以上続く
貧血の症状は疲労症状と似ています。ただの疲れだと思っていたものが、実は貧血だったというのは婦人科で指摘される症状の1つです。
その他の健康上の要因
全員に当てはまるわけではありませんが、以下のような慢性疾患が、異常な疲労の原因となることがあります。
- 自己免疫疾患
ループスや関節リウマチなどの疾患 - 慢性疲労症候群
極度の疲労を特徴とする複雑な疾患 - 線維筋痛症広範囲の痛みと疲労を引き起こす疾患
- 睡眠時無呼吸症候群
診断されていないことが多く、質の悪い睡眠と日中の疲労につながる
「異常な疲れ」への対策
このように様々な要因から、40代以降の女性たちは異常なほどの疲労を感じやすい状況にいます。しかし適切に対処することで、疲労感を下げ、適切なケアと心がけ次第で、エネルギッシュで活力に満ちた生活を送ることは可能です。
ここからは、健康と活力を取り戻すための包括的な対策をご紹介します。
1. 薬剤によるホルモン量の調整
更年期の前後に差し掛かる時期には、ホルモンバランスが変化するため、専門医の指導のもと適切な治療薬でホルモン量を調整することが大切です。
- ホルモン補充療法
減少するエストロゲンを補うホルモン補充療法(HRT)。HRTで補充する女性ホルモンの量は低用量ピルと比べるとかなり少なくなっているため、ピルが使えなくなる40代からも利用も可能です。ただし、医師の判断のもと処方の可否を確認する必要があります。 - バイオアイデンティカルホルモン療法 (通称:ナチュラルホルモン療法)
体内で自然に生成されるホルモンと分子構造が同一である合成ホルモンを用いて、ホルモンバランスを調整する治療法。化学的に体内のホルモンと同一の分子構造を持つため、体が自然なホルモンとして認識しやすいとされています。対象となるホルモンはエストロゲン、プロゲステロン、テストステロンなどが含まれます。
2. 睡眠の質の向上に務める
良い睡眠をとることは、疲労回復へ繋がります。ホルモンの変化や生活スタイルの影響で睡眠の質が低下しがちなこの時期、意識的に睡眠を改善する取り組みをするのは有効なことです。
- 規則正しい睡眠スケジュールを維持する (睡眠時間は7-9時間を目安に、自分に合った時間を見つける)
- 睡眠時の室温を18-22度に保つ
- 遮光カーテンなどで暗くて静かな環境を作る
- 就寝1時間前にはスマートフォンやパソコンの使用を控える(ブルーライトの影響を避ける)
3. タンパク質をとって、代謝を高める
お肉や魚、卵などに含まれるタンパク質は筋肉の維持に役立ちます。40代になると筋肉量が減少しやすくなり、代謝低下の原因になります。タンパク質は筋肉の主成分で、適切な摂取は筋肉の維持と回復を助け、基礎代謝を高く保つのに役立ちます。
またタンパク質はホルモンの原料となります。十分なタンパク質摂取は、ホルモンの生成と調整をサポートし、疲労感の軽減につながる可能性があります。
4.メンタルヘルスに目をむける
ストレスは身体的な疲労を引き起こすことがあります。疲労の回復には、心や脳が十分に休息できていることも大切です。
自分自身のメンタルに目を向け、セルフケアを行ってみることができます。
- 瞑想やヨガなどのリラックス法を試す
- 仕事と私生活の境界線を明確にする
- 「ノー」と言うことを学び、過度な負担を避ける
- 同じ年代の女性とのコミュニティに参加する
一方で、メンタルヘルスケアは、一朝一夕には効果が現れないことも多いですし、セルフケアで解決できる範囲にも限界があります。必要に応じてカウンセリングや心理療法を検討し、専門家のサポートを受けましょう。
5. 貧血と月経過多への対処
40代になると月経過多による身体への負担が大きくなっていることがあります。定期検診の結果や月経の状態で思い当たるものがあれば、すぐに専門医に相談しましょう。
- 人間ドックや定期検診のフェリチンやMCVを含む、鉄分レベルを確認する
- 月経過多の症状がある場合は婦人科医に相談する
それでも疲労が続く場合は
生活習慣の改善にもかかわらず疲労が続く場合は、更年期専門家への相談をお勧めします。
異常なほどの疲労が続くのは、年齢や忙しさのせいだけではありません。それは、あなたの身体が、自分自身の身体に目を向けることへのサインかもしれません。
身体から出るサインを見逃さないことと、根本的な原因を理解し対処することで、いきいきとした今後のライフステージを迎えることができるでしょう。
今日から、健康づくりを始めましょう。きっと、活力にあふれ、いきいきと輝き、人生のどんな挑戦にも立ち向かえるはずです。