「更年期」と一口に言っても、症状が出る時期や症状の度合いには個人差があり、その症状の種類も様々です。
ここでは、更年期の変化をより理解するために、基本的な仕組みについてご紹介します。
「この症状は更年期?」とお悩みの方は、更年期症状の程度をチェクできる「更年期セルフチェック」をあわせてお読みください。
女性ホルモンと更年期
身体の中には多くのホルモンがありますが、主に更年期に関わるホルモンが「女性ホルモン」です。
まずは、女性ホルモンの働きと、どのように分泌されるのかを見ていきましょう。
2種類の女性ホルモン
女性ホルモンには、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2種類があり、それぞれ以下のような役割があります。
- エストロゲン(卵胞ホルモン)
子宮内膜を厚くする、受精卵の着床を助けるなど、妊娠に備える。
骨量を維持する、コレステロールのバランスを整えるなど、健康面をサポートする。 - プロゲステロン(黄体ホルモン)
妊娠の成立に向けて子宮の働きを整え、妊娠を維持する。
体温を上げる、食欲を増進させる、体内に水分をキープする。
女性ホルモンの分泌
エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2つの女性ホルモンは、どこから分泌されているのでしょうか?
実は、女性ホルモンは、卵巣から分泌されています。(子宮は女性ホルモンを出してはいません。)
そして、それは脳からの指令で制御されているのです。
まず、脳の中にある視床下部という部分が、同じく脳の中にある下垂体に、指令(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)を出します。
指令を受けた下垂体は、性腺刺激ホルモンである「卵胞刺激ホルモン」と「黄体形成ホルモン」を分泌します。
この2種類の性腺刺激ホルモンが卵巣に運ばれて卵巣を刺激し、卵巣からエストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されます。
さらに、卵巣から分泌された女性ホルモンの量は脳にフィードバックされます。
この一連の流れによって、脳は女性ホルモンの量を調節する指示を出し、必要な量の女性ホルモンを維持しているのです。
ちなみに、視床下部というのは、コントロールセンターのような働きをしており、ホルモンの分泌だけでなく、自律神経や免疫系にも働きかけて、身体を快適な状態に維持できるようにしています。

更年期には何が起こるか
更年期に入り卵巣機能が低下してくると、エストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量が減ってきます。
そのため、脳の指令が「エストロゲンをもっと出して」というものであっても、卵巣機能が低下していると、エストロゲンの分泌量は増えません。しかし、脳はさらにエストロゲンを増やす指示を出します。
このような状態を繰り返すうちに、ホルモンバランスや自律神経のバランスが乱れ、心身にさまざまな不調が現れてきます。

更年期を理解するために知っておきたいこと
更年期の時期
一般的に、更年期とは閉経の前後5年の合計10年間を指すと言われています。
日本人の閉経年齢の中央値である50.5歳から計算すると、45~55歳が更年期にあたるということになります。
しかし、更年期の時期や症状は個人差が大きいのも事実です。そのため、「更年期はいつから始まるのだろう?」と疑問に思われる方も多いですが、閉経の前からその時期を知ることは難しく、閉経後にさかのぼって分かるのです。
閉経
閉経は、卵巣の機能が低下して月経が完全になくなる状態のことを言います。
具体的には、月経がない状態が12ヶ月間続くと閉経したとみなします。
たとえば、昨年の1月に最後の月経があり、今年の1月まで月経がなければ、さかのぼって昨年の1月に閉経したということになります。
更年期のサイン
更年期は、閉経した後に振り返ってみて「更年期はあの頃から始まっていたんだな」と分かるもの。
でも、更年期真っ只中に分かる方法は何かないのでしょうか?
いくつかサインとなりうるものを紹介します。
- 月経周期の乱れ
(月経周期や月経期間が長くなる・短くなる、経血量が減る・増える、などの変化) - 疲労感や気分の浮き沈み
- ホットフラッシュ
- 不眠
- 関節痛 など
あくまでも、これらのサインは一例で、不調の種類や程度には個人差があることもぜひ覚えておいてください。
また、更年期の不調はさまざまな形で現れます。その不調が更年期によるものなのか、他の病気によるものなのかを判断することが重要です。
ご自身で判断するのではなく、不調を感じたら信頼できる医師に相談することが大切です。
▼ 更年期の期間について、詳しくはこちら
『更年期の終わりのサインとは? 〜私だけの更年期との付き合い方を求めて〜』
更年期症状と更年期障害
更年期には、女性ホルモンの分泌量が乱高下を繰り返しながら減っていくため、女性の身体や心には、さまざまな不調が現れやすくなります。
更年期の時期に現れるさまざまな症状の中で、他の病気が原因でないものを「更年期症状」と呼びます。
更年期症状には、ほてり、のぼせ、発汗、動悸、頭痛、関節痛、冷え、疲れやすさなどの身体症状、気分の落ち込み、 意欲低下、イライラ、不眠などの精神症状があります。
また、更年期を迎える全員が、更年期症状を感じるわけではありません。人によってはは、月経周期の乱れや月経がこなくなっていくという変化を感じて更年期を過ごす方もいます。
さらに、更年期症状によって日常生活への支障をきたす状態を「更年期障害」と呼びます。
さいごに
更年期は我慢するものと思われがちですが、そうではありません。
一人で我慢せずに、まずは医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。
最後に、更年期のケアにおいて大切なことを、ご紹介します。
- まずは、自分の身体に今何が起こっているのかを把握して、自分にあったケアの方法を見つけること
- そのために、更年期の知識や経験が豊富な専門家に相談すること
- 選択肢の一つとして、漢方薬やホルモン補充療法(HRT)に頼るという選択を持っておくこと