「寝ても寝ても眠い」「日中の強い眠気で仕事に集中できない」──更年期に入ると、このような悩みを抱える人は少なくありません。ホルモンバランスの変化や自律神経の乱れが眠気やだるさを引き起こすほか、生活習慣やストレスも大きく影響します。この記事では、更年期に眠気を感じる原因と、その対策方法について分かりやすく解説します。
更年期の「眠い」とは?
どんな状態を指すのか
一言で「眠い」といっても、その感じ方には原因にはいくつかのパターンがあります。一時的な寝不足とは違い、更年期ではホルモンバランスの変化や自律神経の乱れが関わることで、眠気が独特の形で現れ、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。
日中の強い眠気(眠くて仕事や家事に集中できない)
日中に強い眠気に襲われ、仕事や家事に集中できなくなるケースがあります。特に会議中や運転中など、本来なら眠気を感じにくい場面で強い眠気が出てしまうと、安全面や生活の質に直結する問題となります。
夜間の睡眠の質が低下して「寝ても寝ても眠い」状態
「しっかり寝たはずなのに、朝からだるくて眠い」という人も少なくありません。更年期には浅い眠りや中途覚醒が増えるため、睡眠時間は足りていても質が下がり、回復感が得られにくくなります。その結果、翌日もずっと眠さや疲労が残ってしまいます。
疲労感やだるさが取れずに眠気として感じられる場合
身体の疲労感や慢性的なだるさが、強い眠気として表れることもあります。ホルモン変化による代謝の低下やストレスの影響で体が常に重く感じられ、「眠い=休みたい」という信号として脳が受け取っているのです。睡眠自体だけでなく、体調や生活リズム全般が影響しているケースといえます。
更年期に眠くなるのはなぜ?
更年期に強い眠気を感じる背景には、さまざまな要因が絡み合っています。単に「年齢のせい」と片付けられるものではなく、体の仕組みや心の状態が複雑に影響しています。ここでは代表的な原因を紹介します。
ホルモンバランスの変化と自律神経の乱れ
更年期の大きな変化のひとつが、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が減少することです。このホルモンは自律神経の働きとも深く関わっているため、分泌が乱れると交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかなくなります。
本来睡眠中は副交感神経が優位になり、非常に安定した睡眠を作る必要がありますが、更年期にはエストロゲン分泌の乱れなどにより、睡眠中も交感神経が緊張してしまう状態になりやすいのです。
睡眠の質の低下(浅い眠り・中途覚醒)
上記の理由で、更年期には深い眠りが減り、眠りが浅くなり、夜中に目が覚める「中途覚醒」も増えるようになります。その結果、「寝ているのに寝ていない」状態となり、朝から疲れが抜けず、日中の強い眠気やだるさにつながってしまうのです。
ホットフラッシュや発汗など身体症状の影響
更年期特有のホットフラッシュや寝汗も同様にエストロゲンの分泌が大きく変動・低下し、脳の体温調節中枢の神経細胞が過剰に反応することで生じ、睡眠を妨げる大きな要因です。夜中に急に体が熱くなったり汗をかいて目が覚めたりすると、眠りが分断されてしまいます。これが繰り返されると「眠っても疲れが取れない」という状態になり、日中の眠気が強くなります。
ストレスや心理的要因
更年期は身体の変化だけでなく、仕事や家庭での役割の変化、将来への不安など心理的なストレスが重なる時期でもあります。ストレスは自律神経のバランスを崩し、眠りの質を下げる大きな要因となります。精神的に緊張した状態が続くと、夜にしっかり休めず、日中に強い眠気として現れることがあります。
その他の可能性(貧血・甲状腺・睡眠時無呼吸など)
すべての眠気が更年期によるものとは限りません。鉄分不足による貧血や、甲状腺機能の低下症、睡眠時無呼吸症候群なども強い眠気を引き起こす原因になります。更年期の症状と混同してしまいがちですが、こうした病気が隠れている場合には、適切な検査や治療を受けることで改善できるケースもあります。
更年期の眠気にどう対処する?
更年期の眠気は、単なる生活習慣の乱れだけでなく、ホルモンや自律神経の変化が関わる複雑な症状です。そのため「よく寝れば解決する」という単純なものではありません。ただし、日常生活の工夫やセルフケアで改善できる部分は多くあります。ここでは具体的な対策を紹介します。
睡眠環境を整える
寝室の温度や湿度を快適に保ち、カーテンや照明で適度な暗さを確保することが大切です。就寝前のスマホやテレビは脳を刺激してしまうため、できるだけ控えると良いでしょう。眠るためのルーティンを整えることで、体が自然と休息モードに入りやすくなります。
規則正しい生活リズムと適度な昼寝
毎日同じ時間に寝起きすることは、自律神経のリズムを整える基本です。眠気が強いときには短時間の昼寝(20分以内)を取り入れると効果的ですが、長く寝てしまうと夜の睡眠に悪影響を与えるため注意が必要です。
運動習慣を取り入れる
ウォーキングや軽いジョギング、ヨガなどの運動は、自律神経を整える効果があるとされており、実際に更年期女性の精神症状や不眠の改善に効果があることが複数の研究で報告されています。朝の時間帯に日光を浴びながら体を動かすと、夜の睡眠の質を高める効果も期待できます。
栄養バランスの取れた食事
タンパク質は筋肉やホルモンの材料となり、鉄分は酸素を体に運ぶ働きがあるため、不足すると疲労感や眠気が強くなります。タンパク質(魚や肉、卵、大豆製品)、緑黄色野菜をバランスよく取り入れることを意識しましょう。夕飯にタンパク質とカロリーをしっかりと摂取し、炭水化物・糖質を控えましょう。睡眠時の血糖値の乱高下を抑えることができ、朝がすっきりと目覚められるようになります。
また朝食を欠かさず食べましょう。忙しい朝は作り置きなどを利用し、タンパク質を意識した手軽な朝食でスタートしましょう。
ビタミンDやカルシウムも骨の健康だけでなく睡眠の質に関わる重要な栄養素です。眠気、疲労感を感じる方の多くは、糖質の摂取割合が多く、栄養が十分に足りていないケースがよくみられます。サプリメントもうまく利用して、鉄・ビタミンB・ビタミンDなどの栄養素を補うと良いでしょう。
ストレスを減らす工夫
更年期はホルモンの減少がきっかけですが、ストレスの有無によって症状の重さが大きく変わります。仕事や家庭でのストレスが多いと、交感神経の緊張状態が長時間続くため、疲労感や眠気が悪化しやすくなります。意識的にリラックスできる時間を持ち、交感神経を休めることが大切です。深呼吸や瞑想、アロマ、趣味の時間、カウンセリングなど、自分に合った方法で心を整えることが対策になります。
ホルモン補充療法・漢方薬
セルフケアだけで改善が難しい場合には、治療を検討するのも選択肢の一つです。ホルモン補充療法(HRT)は更年期特有の不眠や睡眠の質の低下にも効果があるとされ、眠気の改善につながることが報告されています。一方、漢方薬では体質や症状に応じて、一人一人に合った種類を選択します。漢方は効果が出るまでに時間がかかる場合もありますが、専門医と相談しながら自分に合った処方を見つけていくことが大切です。
医師に相談すべきタイミング
更年期の眠気はセルフケアである程度改善できる場合もありますが、症状が長引いたり生活に支障が出るようであれば、早めに専門医へ相談することが大切です。
眠気やだるさが長期間続いている
数日ではなく数週間から数か月にわたって強い眠気やだるさが続く場合、更年期による変化に加えて他の要因が隠れている可能性があります。我慢せず医師に相談しましょう
日常生活や仕事に大きな支障がある
仕事中に強い眠気で集中できない、運転が不安になる、家事や育児に影響が出るといった場合は、生活の質に直結する問題です。セルフケアだけに頼らず、早めの受診が望まれます。
動悸や強いほてり、気分の落ち込みが重なっている
眠気に加えて動悸やホットフラッシュ、気分の落ち込みや不安感が強く出ている場合、更年期症状全体が悪化している可能性があります。こうした心身の症状は専門医であれば更年期の仕組みを理解したうえで適切な対処法を提示してくれるため、一人で抱え込まず相談することが大切です。
更年期の眠気と向き合うために
日常が忙しいと「疲れているから眠いのは仕方ない」と片付けられがちですが、長引く眠気や生活に支障をきたすほどの症状は、放置せず専門医に相談することが大切です。
もし「眠気がつらいけれど病院に行く時間がない」「いろいろな検査をしたけど異常なしと言われただけだった」「どこに相談したらよいか分からない」と感じているなら、更年期専門のオンライン診療サービス「Vivalle(ビバエル)」 で相談してみてください。
スマートフォンやPCから自宅で受診でき、更年期医療に詳しいカウンセラーや専門医があなたの症状に合わせた対処法を提案してくれます。忙しい日々の中でも、安心して相談できる場所を持つことが、つらい症状から解放される第一歩となるでしょう。