更年期には、特に理由もなく漠然と不安感に襲われたり、イライラや気分の落ち込みが増える方が多くなります。これらの不安感は、ホルモンバランスの変化によるもので、自分の意思だけではコントロールしにくく、悩みの原因となりがちです。
しかし、不安感を和らげる対策や心のケアについて知っておくと、日常生活をより快適に過ごす手助けとなります。
この記事では、更年期に起こりやすい不安感の症状や原因、そしてうまく付き合っていくための対処法をご紹介します。
更年期の不安感とは、40〜50代の女性に多くみられる、女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少により、脳内のセロトニン・ノルアドレナリン分泌が乱れて、理由のない不安・動悸・パニック様症状が突然襲ってくる状態を指します。「漠然と不安」「電車に乗ると怖い」「夜寝る前に動悸が止まらない」といった訴えがよくあります。
更年期の不安感には、大きく 3つのパターン があります。
- 漠然とした慢性不安:理由のない不安が日常的に続く・気分が晴れない
- 突発的な強い不安発作:動悸・息苦しさ・冷や汗を伴うパニック様症状
- 身体症状を伴う不安:胸の圧迫感・喉の詰まり・めまいが繰り返す
対策は ホルモン補充療法(HRT)・漢方薬・カウンセリング・認知行動療法の組み合わせ。不安感が2週間以上続く・日常生活に支障が出ている場合は、婦人科・更年期外来・心療内科の受診を。一人で抱え込まず早めの相談が回復への近道です。本記事では更年期の不安感の原因と対処法を医学博士監修で解説します。

更年期の不安感の症状
更年期移行期に現れる心理的な症状の一つに不安があります。更年期症状にはほてりなどの血管運動神経症状がよく知られていますが、研究によるとこの時期の心理的症状も重要であることが分かっています。
更年期では、不安症状や気分の変化が現れることがあります。研究によると、この時期に臨床的に重要な気分障害や不安障害を発症する方もおり、最大40%の女性が更年期移行期に強い心理症状を経験する可能性があるとされています。ただし、症状があることが必ずしも障害を意味するわけではありません。
更年期における一般的な不安関連症状:
- 神経質さや緊張感
- イライラ
- 睡眠の問題
- 集中力の低下
- 思考の混乱
不安に伴う身体症状:
- 動悸
- 息切れ
- 筋肉の緊張
- 消化器の問題
- 疲労感
特定のきっかけがなくても漠然とした不安を感じる方もいます。不安が重症化したり持続したりする場合は、より深刻な状態に発展し、日常生活に支障をきたすこともあります。その場合は、症状に応じた具体的な治療が必要となるため、専門医の診察を受けることが重要です。
更年期に不安感に襲われる原因
更年期では、加齢に伴い女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が徐々に減少します。このホルモンの変化は、体のホルモンバランスを調節する脳の一部(視床下部)に影響を与え、結果的に自律神経系にも変化が起こります。これにより、さまざまな心身の症状が現れ、不安感もその一つとして経験されることがあります。
エストロゲンの減少は、心の安定に重要な脳内物質(セロトニン)にも影響を与えることがあります。セロトニンは気分の安定に重要な役割を果たしており、このバランスが崩れると、不安感が強くなることがあります。
更年期の不安感は、身体的な変化だけでなく、心理的・社会的な要因にも大きく関係します。例えば、仕事や家庭での役割の変化、人間関係の変化、生活環境の変化などが不安感に影響を与えることがあります。
不安感を和らげるための対処法
更年期に伴う不安感に悩み、心と体に大きな負担を感じている方は少なくありません。不安感を完全に取り除くのは難しいかもしれませんが、対処法によっては緩和が期待できます。
ここでは、不安感を和らげるための具体的な方法をご紹介します。
生活習慣を見直す
更年期の不安感を和らげるためには、以下のような生活習慣の見直しがとても大切です。
- 規則正しい十分な睡眠
- 睡眠不足は体内のリズムを乱し、自律神経に悪影響を及ぼします。規則正しい睡眠を心がけ、十分な休息を取ることを意識しましょう。睡眠のためには、下記で紹介するリラックス方法を取り入れるといいでしょう。
- バランスの良い食事
- ビタミンB群は神経の働きを整える栄養素です。ビタミンDは精神を安定させるために欠かせないため、日光を浴びる習慣を持ちましょう。また、貧血予防には鉄分の摂取も重要です。さらに、たんぱく質は女性ホルモンやメンタルに関するホルモンの材料となるので、これらの栄養素を意識的に摂取することが大切です。
- 適度な運動
- ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、気分を安定させる効果が期待できます。忙しくて運動する時間が取れない方は、普段から階段を使ったり、できるだけ歩いて移動することを意識してみましょう。
- 自分時間の確保
- 自分の時間を作ることと、自分が抱えているさまざまな負担をどう減らすのかを考えることが大切です。日々の忙しさのなかでも、自分を見つめ直し、心身を休める時間を意識的に取ることでリフレッシュできます。
これらの生活習慣を意識して見直すことで、不安感を和らげることが期待できます。自分のペースで無理をせず取り入れ、少しずつ心と体のバランスを整えていきましょう。
リラックス法を取り入れる
リラックス法として、深呼吸とアロマテラピーを日常に取り入れることで、不安感を和らげる効果が期待できます。
- 深呼吸
- 深呼吸を行うことで、副交感神経の活動を優位にすることができ、自律神経を落ち着かせるのに効果的です。特に、息をゆっくり吐き出すことで、リラックス効果が高まります。逆に、浅く速い呼吸は交感神経を優位にするため、注意が必要です。
- アロマテラピー
- アロマテラピーは精油を使った民間療法で、アロマの精油の香りを空気中に広げて香りを楽しむ芳香浴と、精油を植物油に希釈し皮膚に塗る方法があります。
特にラベンダーは副交感神経を優位にし、リラックスした気分になれることが知られている香りです。
気分の浮き沈みがある場合はフローラルが用いられることが多く、スイートオレンジは不安を和らげ、気持ちを明るくするような香りと言われています。
- アロマテラピーは精油を使った民間療法で、アロマの精油の香りを空気中に広げて香りを楽しむ芳香浴と、精油を植物油に希釈し皮膚に塗る方法があります。
これらのリラックス法で、気持ちが落ち着き、不安感を和らげる効果が期待できます。さらに、マッサージや鍼灸で体をほぐしたり、趣味の時間を楽しんだりすることで、自分の心と体を理解することも大切です。
リラックス方法は人それぞれに異なるため、自分にとって一番合う良い方法を見つけていきましょう。
薬を使用した治療を利用する
生活改善だけでは不安感が解消されない場合、薬を用いた治療も有効な選択肢の一つです。以下に、主な治療法をご紹介します。
- ホルモン補充療法(HRT)
- 減少したエストロゲンを補充することで、更年期障害の症状を和らげる治療法です。ただし、不安感などの精神的な症状の場合、十分な効果が得られないこともあります。
- 漢方薬
- 婦人科でよく使用される加味逍遙散(かみしょうようさん)が、不安やイライラ、不眠といった精神症状に効果が期待できる漢方薬です。また、自律神経の乱れによる不安やイライラ、不眠、怒りっぽさに対しては抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)が用いられ、神経を落ち着かせて気持ちを鎮める効果が期待できます。
- 向精神薬
- 不安感やうつ症状が強い場合は、抗不安薬や抗うつ薬などの向精神薬を服用します。症状がひどい場合は、医師の診断を受け、安全に使用することが大切です。
不安感の治療は個人によって異なるため、薬を使用した治療を検討する際は、医師と相談して最適な治療法を選びましょう。
認知行動療法を利用する
認知行動療法とは、ストレスや不安を軽くするために、考え方や行動を少しずつ見直していく方法です。
もともとは、心療内科の治療の一つとして使われていましたが、現在では、法律や教育、ビジネス、スポーツなど、あらゆる領域で認知行動療法の考え方が取り入れられています。
認知行動療法を取り入れることで、更年期の女性が抱えやすい「ネガティブな思い込み」や「極端な考え方」を、治療者と一緒に整理し、現実に即した視点を持てるようにします。
たとえば、「失敗したら全部ダメだ」という考えを「うまくいった部分もある」とバランスよく捉える練習をしたり、不安に対処するための簡単なステップやリラックス法を学びます。
不安障害の治療では、薬と認知行動療法を併用することで、単体利用より効果が高いとされています。更年期の不安感においても、取り入れてみてはいかがでしょうか。
心療内科を受診する
不安感は、更年期に起こるさまざまな環境の変化や、人間関係によって引き起こされることがあり、更年期障害と無関係な場合もあります。
不安を伴う疾患で不安障害が多く見られ、うつ病などほかの精神疾患の一つの症状として、不安が現れることがあります。そのため、自分の不安感が、更年期障害なのかそうでないかを確認するために、心療内科を受診するのも一つの方法です。
医療機関では、不安以外の精神症状や体の健康状態を確認し、総合的に更年期障害かどうかを判断します。
更年期の不安感は専門家に相談を
更年期の不安感は、多くの女性が抱える悩みの一つです。
女性ホルモンの減少に加え、生活習慣やストレスが影響しているため、自分の体や心の状態をよく理解し、自分に合った対処法を見つけることが大切です。
生活習慣の見直しやリラックス法での改善が難しい場合は、専門家に相談することを検討しましょう。
ビバエルは、更年期に特化したオンライン診療サービスです。専門の医療従事者が症状を丁寧に理解し、更年期特有の症状に対して医学的根拠に基づいたケアプランや、適切な診断と治療法を提供します。
更年期障害の治療は、単なる対症療法だけでは難しいこともあり、信頼できる医療機関と共に治療に取り組むことが、症状の改善に向けて大切な一歩となります。
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更年期の不安感に関するよくある質問
Q. 更年期に急に不安感に襲われるのはなぜ?
A. 女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少が主因です。エストロゲンは脳内のセロトニンやノルアドレナリンなど、気分を安定させる神経伝達物質の分泌に深く関わっています。減少すると 感情のコントロールが効きにくくなり、理由のない不安・動悸・パニック様症状 が突然現れることがあります。
Q. 更年期の不安と更年期うつの違いは?
A. 不安感は「漠然とした不安・動悸・落ち着かなさ」が中心、更年期うつは「気分の落ち込み・意欲低下・希死念慮」が中心です。両方が混在することも多く、症状が 2週間以上続く・日常生活に支障 がある場合は専門医に相談を。HRT で改善するケースも多いです。
Q. 不安感を和らげる即効性のある方法は?
A. 不安発作を感じた時の即効対応は (1) 4秒吸って8秒かけて吐く深呼吸を1分続ける、(2) 冷たい水を手首・首筋に当てる、(3) 「5-4-3-2-1グラウンディング」(見える5つ・聞こえる4つ・触れる3つ・嗅げる2つ・味わえる1つ)、(4) 安全な場所で横になる。これで多くは数分で落ち着きます。
Q. 何科を受診すればいい?
A. (1) ホットフラッシュ・寝汗・月経乱れなどの更年期症状を伴う → 婦人科・更年期外来、(2) 不安・うつ・パニックが主症状 → 心療内科・精神科、(3) 動悸・息苦しさが強い → まず内科で心臓疾患を除外 が基本です。婦人科で HRT を開始すると不安感も改善することが多いです。
Q. 更年期の不安に効く薬は?
A. 代表的なのは (1) HRT(ホルモン補充療法):根本治療、(2) 漢方薬(加味逍遙散・抑肝散・半夏厚朴湯等)、(3) SSRI/SNRI:強い不安・うつ症状に、(4) 抗不安薬:頓服で使用。HRT は脳のセロトニン作用を間接的にサポートする働きもあり、更年期の精神症状に対しても有効です。
Q. 一人で抱え込まないために何ができる?
A. (1) 同じ世代の女性と話す機会を持つ、(2) 信頼できる人に「最近不安なんだ」と口に出す、(3) オンラインでも対面でも、カウンセリングを利用する、(4) 自分が「弱い」のではなく「ホルモンの変化」だと理解することが大切です。更年期の不安感は 多くの女性が経験する自然な反応。一人で頑張りすぎず、専門家のサポートを受けてください。