健康診断で「γ-GTP(ガンマGTP)の数値が高い」と言われて、不安になった方もいるのではないでしょうか。

特に40〜50代の女性の中には、「お酒をほとんど飲まないのに、なぜ数値が上がるの?」と感じる方も少なくありません。

実は、このγ-GTPの上昇には、更年期に起こる女性ホルモン(エストロゲン)の変化が関係している場合があります。

この記事では、更年期前後の女性に見られるγ-GTPの上昇について、原因・考えられる病気・日常でできる改善法をわかりやすくご紹介します。

γ-GTP(ガンマGTP、γ-GT)とは?女性の基準値と役割

γ-GTPは肝臓と深い関係

γ-GTP(現在はγ-GT(ガンマ・グルタミルトランスフェラーゼ)が正式名称だが、本記事においては通称である「γ-GTP」と呼ぶ)は、肝臓や胆のう、胆管などに多く存在する酵素です。
主にアミノ酸の代謝に関わっていますが、健康診断では肝臓や胆道系の健康状態を示す指標として使われています。
血液中のγ-GTPが高い場合、肝臓や胆管に負担がかかっているサインかもしれません。

女性のγ-GTP基準値はどのくらい?

女性のγ-GTPの基準値は、一般的には30IU/l以下と言われています。
閉経後の女性では、ホルモンの変化により基準値内でもやや高めになることがありますが、基準値を超えて高い状態が続く場合は、肝臓や胆道の病気が隠れている可能性があるため注意が必要です。

更年期にγ-GTPが高くなりやすい理由

お酒をあまり飲まない女性でも、更年期の影響でγ-GTPが高くなることがあります。

女性ホルモン(エストロゲン)の低下による代謝の変化

更年期に入ると、卵巣機能の低下にともなって女性ホルモンの一種であるエストロゲンが急激に減少します。エストロゲンには、脂質や糖の代謝をコントロールし、肝臓に脂肪が蓄積するのを防ぐ働きがありエストロゲンは「太りにくい体質を保つホルモン」といえます。

エストロゲンが減少することで、肝臓での脂質や糖の代謝が悪化し、中性脂肪が蓄積しやすくなります。その結果、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を発症しやすくなり、これがγ-GTPを上昇させる代表的な原因となります。NAFLDは、お酒をほとんど飲まない人でも発症する脂肪肝です。

コレステロールや中性脂肪の増加

ホルモンバランスの変化は、血中の酸化LDLコレステロール(悪玉)の上昇や中性脂肪の蓄積も引き起こします。これらはすべてメタボリックシンドロームのリスクを高め、肝臓への負担がさらに増すことで、結果的にγ-GTPの上昇につながります。

ストレスや睡眠不足が関係することも

更年期は自律神経の乱れも生じやすく、ストレスや睡眠不足が重なることで、肝臓の機能低下や代謝異常が起きやすくなります。心身の不調が、間接的にγ-GTPの数値を押し上げる要因となることも少なくありません。

お酒を飲まないのにγ-GTPが高い!女性に多いその他の原因

γ-GTPの上昇は更年期だけでなく、次のような病気や生活習慣が原因になることもあります。

脂肪肝(非アルコール性脂肪肝:NAFLD)

更年期以降の女性に多く見られる病気です
食べすぎや運動不足、肥満、糖尿病などの生活習慣が主な原因です。
放っておくと肝炎(NASH)に進行し、肝硬変や肝がんにつながることもあるため、早めの対応が大切です。

薬の影響(薬剤性肝障害)

普段飲んでいるサプリメントや薬(鎮痛薬、ホルモン剤、睡眠薬、風邪薬など)の成分が肝臓で代謝される際、肝臓に過度な負担をかけ、機能障害を引き起こすことがあります。
薬の影響で一時的にγ-GTPが上がることもあるため、心当たりがある場合は医師に相談しましょう。

胆石・胆道の病気

γ-GTPは、肝臓だけでなく胆のうや胆管にトラブルがある場合にも上昇しやすい特徴があります。胆石症、胆管炎、胆のう炎、胆道がんなどが原因で胆汁の流れが滞ると、γ-GTPが急激に上昇することがあります。

右上腹部の痛みや発熱、黄疸(皮膚や目が黄色くなる)などの症状があれば、すぐに医療機関を受診してください。

自己免疫性肝炎

免疫の異常により、自分の肝臓細胞を攻撃してしまう慢性的な疾患で、比較的女性に多いことが知られています。疲れやすさ、倦怠感、食欲低下、体重減少などの非特異的な症状がみられることもありますが、自覚症状が出にくく健診で指摘されて見つかることが多いです。

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるように、自覚症状が出にくい臓器です。
放置すると慢性化し、肝硬変や肝がんのリスクが高まります。
健康診断で指摘を受けた場合は、早めに医療機関で詳しい検査を受け、原因を特定しましょう。

γ-GTPを下げるための具体的な改善法

更年期や生活習慣に伴うγ-GTPの上昇は、日々の工夫で改善が期待できることもあります。
まずは知ることから始めていきましょう。

食事のポイント

避けたい食品

  • 糖質の多い食品(菓子パン・清涼飲料水など)
  • 揚げ物や脂身の多い肉
  • 加工食品・スナック菓子
  • 過度なアルコール摂取

摂りたい食品

  • 良質なタンパク質(肝細胞の材料、肝細胞の修復に必要、肝臓への脂肪の蓄積を防ぐなど)
  • 魚(DHA・EPAが中性脂肪を下げる)
  • 大豆製品(イソフラボンが女性ホルモンに似た働き)
  • 野菜・きのこ・海藻(抗酸化作用・食物繊維)

運動と生活習慣

脂肪肝の改善には、食事療法と並行して運動が非常に重要です。

  • 有酸素運動
    ウォーキング、ジョギング、水泳など、無理なく継続できる有酸素運動を週に3回以上行い、肝臓に蓄積した脂肪を燃焼させましょう。
  • ストレス・睡眠管理
    更年期の症状でもある自律神経の乱れは肝機能にも影響します。質の高い睡眠を取ることや、趣味などを通じたストレス管理を行うことで、交感神経の過剰状態をリセットしましょう。

サプリ・漢方の活用(医師相談の上)

肝臓をサポートする成分(ウコン、シリマリンなど)や、更年期に使われる漢方薬(当帰芍薬散、加味逍遙散など)を利用する方法もあります。

ただし、自己判断せず、必ず医師や薬剤師に相談してから使用しましょう。

γ-GTPが高いとき、何科を受診するべき?

γ-GTPが高いと指摘されたら、まずは消化器内科または肝臓内科を受診しましょう。
病院では、γ-GTP以外の検査項目と合わせて、より詳細な検査を行います。

  • 血液検査(AST、ALT、ALP、中性脂肪、コレステロール、血糖値など)
  • 腹部エコー検査(肝臓の脂肪や胆石の確認)
  • 必要に応じて(肝炎ウイルス検査、CT/MRI、肝線維化診断(FIB-4 Indexなど))

更年期だからと自己判断せず、数値が高い原因を明確にすることが大切です。

まとめ|更年期のγ-GTP上昇は体からのサイン。放置せずケアを

更年期女性のγ-GTP上昇は珍しいことではありませんが、「年齢のせい」と放置してはいけません。
γ-GTPの数値が高い場合は、まず消化器内科や肝臓内科で原因をしっかり調べることが大切です。
あわせて、更年期症状が気になる方は、更年期医療に詳しい専門医へ相談することも検討しましょう。

更年期症状は我慢してしまう人が多く、「相談しづらい」と感じる方も少なくありません。
もし一人で悩んでいるなら、更年期医療に詳しい専門医とつながれる場を積極的に活用してみてください。

更年期専門のオンライン診療「ビバエル」とは

更年期専門の医療者とオンラインで相談、治療ができる Vivalle(ビバエル) です。自宅からスマートフォンやPCを使って受診でき、処方薬は自宅で受け取れるため、忙しくて病院に行く時間が取れない方でも安心して相談できます。

専門の医師による診察はもちろん、症状に応じた治療やカウンセリングの提案も受けられるので、「一人で抱え込まずに専門家と一緒に向き合える」環境が整っています。

FAQ

Q:γ-GTPを下げる食べ物は?

A:たんぱく質、青魚(サバ、イワシ)、大豆製品、野菜、きのこ、海藻など、脂肪燃焼や抗酸化作用のある食品をバランスよく摂りましょう。

Q:更年期と脂肪肝の関係は?

A:エストロゲンの減少により脂肪が肝臓に蓄積しやすくなり、脂肪肝(NAFLD)のリスクが高まります。これはお酒を飲まない人でも起こります。

Q:γ-GTPが高いときに受けるべき検査は?

A:血液検査(AST、ALT、ALP、中性脂肪、コレステロール、血糖値など)に加え、腹部エコーで肝臓の状態を確認します。必要に応じて肝炎ウイルス検査も行われます。