更年期になると「やる気が出ない」って本当?
更年期になって「やる気が出ない」人は結構多い
40代半ばになると、女性の体には色々な変化が起こります。その一つが「やる気が出ない」という気持ち。実は、3人に1人以上の50代女性が、更年期にこのような気持ちを経験していることがわかっています。
(出典:2022年ベルタ社「変わりめ期女性の現状に関する意識調査」)
「やる気が出ない」は単に気分の問題?
「最近、なんだかやる気が出ないわ」「今日も何もする気がしない…」
そんな気持ちは、どんな人にでも起こります。
でも特に40代後半から50代にかけて、こういった気持ちになるのは単なる「気分の問題」や「怠け」ではなく、更年期特有のものの可能性もあります。
更年期には、体の中で女性ホルモンが減ることで、気分が変わりやすくなったり、やる気が出なくなったりします。決して「怠けている」わけではなく、体の変化が関係しているために起こる症状なのです。

どうして「やる気が出ない」と感じるの?
更年期の「やる気が出ない」には、いくつかの理由があります。
1. 更年期のホルモン量の変化
女性の更年期には個人差があるものの、体内のホルモンの量が大きく変化します。具体的には、女性ホルモンであるエストロゲン (卵胞ホルモン) とプロゲステロン (黄体ホルモン)の量が大幅に減少します。
また、女性の体内にも男性ホルモンの1種であるテストステロンが存在します。このテストステロンも更年期の女性は徐々に減少していきます。
女性ホルモンのエストロゲンやプロゲステロン、そして男性ホルモンの一種であるテストステロンというホルモンは、感情の安定や認知機能、エネルギーレベルに至るまで、あらゆるものに影響を与えています。
更年期になりこれらのホルモンが減ると、今まで楽しかったことが急につまらなく感じたりすることもあります。これは性格が変わったわけではなく、ホルモンの量が変化するためです。
また実は、男性ホルモンのテストステロンは、やる気や活力、筋力の維持に関与しているため、その減少が「やる気が出ない」という問題にも影響を与えることがあります。
2. 脳内の神経伝達物質の影響
ホルモンが減ると、脳内の「神経伝達物質」という物質にも影響を与えます。特に心理面に大きな影響を与える神経伝達物質に、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンがあります。
- セロトニン「幸せホルモン」として有名なセロトニン。エストロゲンが減ると、このセロトニンも減ってしまうことがあります。これにより気分が上がったり下がったりしやすくなったり、幸せを感じにくくなったりします。
- ドーパミン
やる気や「ご褒美」の感覚を生み出すドーパミン。エストロゲンやテストステロンが減ると、このドーパミンの働きも弱くなります。これにより、物事に対するやりがいや楽しさを感じにくくなることがあります。
- ノルアドレナリン頭をすっきりさせたり、集中力を高めたりするノルアドレナリン。これが減ると、複雑な作業が難しくなったり、長時間集中できなくなったりします。
更年期に「やる気が出ない」「何もしたくない」と感じるのは、単なる気分の問題ではなく、ホルモン量の変化をきっかけに起こる脳のシステムに影響を与える複雑な変化とも考えられています。
3. 生活の変化
現代を生きる女性にとって更年期は、人生の大きな転換期と重なることがよくあります。
たとえば、子供が成長して独立したり、高齢の親の介護を行っていたり、キャリアの転換や退職などが当てはまります。これらの変化は、単なる環境の変化にとどまらず、個人の役割や責任の急激な変化をもたらします。
長年担ってきた「母親」や「キャリアウーマン」としての役割が薄れることで、自分自身の生きる意味の再定義を迫られ、それがストレスとなります。
さらに、若さや生産性を重視する社会の中で、身体的変化や役割の変化に直面することで、自信喪失を引き起こします。その結果、自分自身に極度に厳しくなったり、自分は十分でないと感じたり、達成感を感じられなくなったり、将来を見通すのが難しくなったりすることがあります。
また、これらの心理的ストレスは、睡眠障害やストレス関連の身体症状を引き起こし、それがさらなる意欲低下につながるという悪循環を生み出すことがあります。慢性的な疲労感や不安感は、新しいことに挑戦する意欲や日常的なタスクへの集中力を低下させます。
こうした様々な環境変化と、それに伴う心理的・身体的影響が複雑に絡み合い、「やる気が出ない」状態を作り出すこともあります。この状態は単なる一時的な気分の落ち込みではなく、複合的な要因による持続的な症状として捉える必要があります。
「やる気が出ない」時におすすめの漢方
漢方が処方される「東洋医学」では、気(き)・血(けつ)・水(すい)の3つ要素が身体の中を正しく巡り、生命活動が維持されるとされています。しかし、何らかの理由によりこれらの要素の1つにでも不足や滞りが起こると、それに関連した不調が現れると考えます。
やる気が出ないような症状があるときは、特に生命エネルギーの「気」のめぐりが滞り、気分の落ち込みや不安が起こったりします。
「気」の巡りを改善し、気分の落ち込みや不安を改善する漢方をご紹介します。
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
精神の安定にはエネルギーである「気」が滞りなくスムーズに流れることが重要であり、柴胡加竜骨牡蛎湯はストレスによって眠れなくなってしまうような神経症に対して、「気」の流れをスムーズにし、気持ちを鎮めます。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」は、生命活動のエネルギーである「気」の量が不足した「気虚(ききょ)」の状態の方に用いられる処方です。
胃腸のはたらきを高め、食欲を出すことで「気」を増やし、「気」を上のほうに動かしてめぐらせることで、元気を補い、胃腸の消化・吸収機能を整えて疲れを改善していく処方です。
人参養栄湯(にんじんようえいとう)
「人参養栄湯(にんじんようえいとう)」は消化器のはたらきを高め、栄養をすみずみにいきわたらせ、「気」と「血(けつ)」の両方を補う処方です。
また、『有形の「血(けつ)」は自生することあたわず、無形の「気」より生ず』と言われるように、同時に「気」を増やすことで、補血を助ける作用があるお薬です。
漢方以外の「やる気が出ない」対処法
更年期の時期に「やる気が出ない」と感じている場合、漢方以外にも対処方法があります。
1. ホルモン補充療法(処方薬)
「やる気が出ない」原因の一つがホルモン量の低下なので、減少したホルモンをお薬で補うことで、気分の変化が期待できます。
ホルモン補充療法(HRT)は気分の安定、エネルギーレベルの向上、認知機能の向上などの心理症状への効果も期待できます。
ホルモン補充療法は処方薬なので薬局では購入できず、医師の診察のもと必要な量を処方して服用するお薬です。
2. 運動習慣
- 運動習慣の重要性
定期的な運動、特にウォーキング、ヨガ、水泳、サイクリングなどの有酸素運動は、気分やエネルギーレベルを大幅に改善してくれます。運動は脳にポジティブな影響を与え、ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の生成を促します。さらに、運動はテストステロンの生成を刺激するので、エネルギー量や気分の改善、性欲の向上にも影響します。 - 持続可能な運動習慣のつくり方
達成できそうな小さな目標から始めて、徐々に時間や強度を増やしていきましょう。楽しいと感じる運動を見つけたり、友人やグループで一緒に運動することで、継続した運動習慣をつくることができるでしょう。 - ホルモン等を増やす運動目標
週に150分以上の中強度の有酸素運動または75分以上の高強度の有酸素運動と、週に2回以上の筋力トレーニングが推奨されています。継続することが重要で、続けることによって気分や「やる気」の向上、総合的な健康状態の改善が期待できます。
3. 食事療法
- バランスの取れた食事と気分改善のための重要ポイント更年期の気分の落ち込み等を改善するためには、必要な栄養素をバランスよく摂る事が重要です。特にタンパク質の摂取は、筋肉量の維持、認知機能のサポート、気分の安定に不可欠です。しかし、この年代の多くの女性が、必要なタンパク質の量を十分に摂れていないのも現状です。
- 1日に必要なタンパク質
1日に必要なタンパク質の目安量は、体重1kgあたり0.8gです。とたえば、体重が60kgの人は48gが目安量となります。 - 代表的なタンパク質の含有量
豆腐(100g):8gのタンパク質納豆(100g):18gのタンパク質焼き魚(100g):20~25gのタンパク質卵(1個・大):6gのタンパク質
4. ストレス管理のテクニック
- マインドフルネスの実践定期的なマインドフルネスの実践は、ストレスの軽減や集中力の向上、そして全体的な健康の向上に役立ちます。複雑なことをする必要はありません。お気に入りのお茶やコーヒーを用意して、15分間だけ自分のために時間を取り、その飲み物を楽しむことから始めてみましょう。
- リラクゼーション法の活用
漸進的筋弛緩法(筋肉に力を入れた後、脱力することによってリラックスしている感じを味わう方法)、深呼吸法、ガイド付きイメージングなどは、ストレスを軽減してエネルギーレベルを向上させるのに役立ちます。こうしたリラクゼーション法は、日常生活に簡単に取り入れることができます。
5. 認知行動療法的なアプローチ
- 否定的な思考パターンの修正
自分の中にある更年期や加齢に関する否定的な考え方を特定して、それに挑戦することで、気分ややる気を向上することができます。ジャーナリングやポジティブな自己対話をすることも効果的でしょう。 - 自己効力感を高める方法小さく現実的な目標を設定して、それを達成することで、自信ややる気を高めることができます。小さな成功や自分への思いやりを実践することは、更年期における自己効力感の構築に重要です。
以上が更年期の「やる気が出ない」「 何もしたくない」といった心理状況への医療的な方法から、セルフケアまで幅広い対処法です。
たくさんありすぎて、何から始めたら良いかわからない…と思われるかもしれませんが、全部実践する必要はありません。状況に応じて自分に合った解決方法を見つけることが最も大切です。
また、ある人に効果的な方法が、他の人にとっても効果的とは限らないのです。
自分にあった方法を探すためには、更年期専門の医療従事者に相談することが近道となるでしょう。

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