だるさや頭痛、体力低下などの体調不良や、止まらない体重増加に悩む更年期女性は多く見られます。

「更年期による体調不良を、受診せずに運動で改善したい」と考えているのではないでしょうか。現在の日本人は運動不足の人が多く、家庭の事情や仕事で忙しい更年期女性も例外ではありません。

この記事では、更年期女性におすすめの運動をお話します。手軽にできる筋トレや有酸素運動なども紹介するので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。

更年期女性に必要な運動量とは

厚生労働省による「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、以下の運動量が更年期女性を含む成人へ推奨されています。

  • 「普通に歩く」程度より身体を使う活動を1日60分以上おこなう(歩数にすると1日8000歩が目安)
  • 息が弾み汗をかく程度の運動を週60分以上おこなう
  • 週2~3回、筋力トレーニングをおこなう

1日60分以上が推奨されている「普通に歩く」と同じか、少し強い程度の活動を下に紹介します。

  • 電動アシストつき自転車に乗る
  • 掃除機をかける
  • 階段を下りる
  • 庭の草むしりをする
  • ピラティスやパワーヨガをする
  • 家で軽~中程度の体操をする

しかし、一番大切なのは「身体を動かす習慣をつけ、毎日の運動量を少しでも増やすこと」です。

最初は無理のない範囲から始め、少しずつ身体を動かす習慣をつけていきましょう。

40代・50代の更年期女性におすすめな有酸素運動

運動量の少ない更年期女性が有酸素運動をすると、イライラ感や寝汗、頭痛などが解消したという報告があります。

また、適切な強度で有酸素運動をすると、以下の理由により身体が健康になるともいわれています。

  • 筋肉量を保つ
  • 自律神経を整える
  • 脳で足りなくなったドーパミンを作る
  • 身体が酸素を取り込む力が強まり、全身持久力が改善する
  • エネルギー消費量が増加し、体脂肪が減少する(ダイエット効果)
  • 血圧・血糖値・血中脂質などの生活習慣病のリスク因子を減らせる

ここからは、更年期女性に取り入れやすい3種類の有酸素運動を紹介します。

ウォーキング【時間や効果】

特別な道具が必要なく、スキマ時間に取り組みやすいウォーキングは、更年期女性におすすめの有酸素運動です。

「1日60分以上・歩数にすると約8000歩以上」が、厚生労働省の推奨する活動量です。生活で歩く量と合わせて目標としてみましょう。なお、身長や体調による個人差はありますが、およそ10分歩くと1000歩になるといわれています。

ウォーキングの効果を高めるポイントは、以下のとおりです。

  • 背筋を伸ばしてあごを軽く引く
  • 歩10~15m先を見る感じでまっすぐに前を見る
  • お腹の筋肉を引き締めて、足は大きく前へ振り出す

ただし、楽しく歩くことが何よりも大切なため、できる範囲でかまいません。時間や歩数を気にするよりも、少しでも歩く量を増やしてみましょう。

家の周りを歩くのもよいですが、時間があるときは自治体が推奨しているウォーキングコースなどを歩いてみるのもよいかもしれませんね。

ヨガ【ポーズ】

ヨガは動きがゆったりとしており、更年期女性にも取り入れやすい運動です。

以下のような、有名なヨガポーズから取り入れてみてはいかがでしょうか。

  • キャット&カウポーズ
  • 真珠貝のポーズ
  • 英雄のポーズ

ヨガにはストレスをコントロールする効果が期待でき、「ホットフラッシュ」と呼ばれるのぼせやほてりなどの更年期症状によいという報告もあります。

必要な運動をヨガ。だけで全てまかなうのは困難ですが、近年、ヨガはジムやスタジオ、オンラインなどさまざまな場所や方法でレッスンを受けられます。最初は、無料で公開されている動画を見て試すのもよいでしょう。

自分の体調に合わせて、生活の中に少しずつヨガを取り入れてみてください。生活の中にストレッチも兼ねて取り入れてみるとよいでしょう。

ヨガポーズの一例(キャットアンドカウ)

水泳

水泳は運動量が多いにもかかわらず、身体への負担が少なく、膝や腰を痛めた人にも取り入れやすいため、人気があります。

ゆっくりと泳いだり、プールの中のウォーキングコースを歩いたりするとよいでしょう。

無理に泳がずに水中を歩くだけでも、筋力トレーニングや有酸素運動よい運動になります。通常の運動に加えて、ぜひ水中の運動も取り入れてみてください。

40代・50代の更年期女性におすすめの筋トレ

有酸素運動と筋トレを組み合わせると、さらに運動効果を高められます。

「胸」「背中」「上腕」「お腹」「おしり」「太もも」など、全身の筋肉をバランスよく鍛えると高い効果を得られるでしょう。

自宅で取り入れやすいのは、自分の体重を利用しておこなう以下のようなトレーニングです。

  • 腹筋
  • プランク
  • スクワット
  • 腕立て伏せ

筋トレは、自分ができる最大の60〜80%程度の強さ(ややきつい程度)に設定し、8〜12回繰り返すのが基本です。おこなう頻度は、週に2~3日ほどが目安とされています。

どの筋肉を使っているかを意識してゆっくりと身体を動かすと、ケガをせずにしっかりとした効果を得られます。

筋トレは高い負荷をいきなりかけるより、少しずつ負荷を高めていくことが大切です。無理をするとケガにつながるため、筋肉を休めながら少しずつ続けていきましょう。

運動できない人向けの更年期におすすめの効くストレッチ

更年期で頭痛やめまいがある場合、激しい運動は難しいのではないでしょうか。

「1日10分のストレッチには、更年期症状や気分の落ち込みを改善する効果がある」という研究結果があります。つまり、激しい運動をしなくても、ストレッチで体調が改善する可能性があるのです。

そのため、更年期で頭痛やめまいがある場合、無理をして激しい運動をする必要はありません。

体調が悪くても取り組みやすいストレッチを、以下に紹介します。以下のようなストレッチから、少しずつ身体を動かしていきましょう。

  • 肩をゆっくりと回す
  • ゆったりと腰を回す
  • 肘を前後に動かし、肩甲骨を寄せたり広げたりする
  • 手をあげて全身をゆったりと伸ばしてから脱力する

ストレッチは寝る前を中心に、気がついた時に少しずつ取り入れると、眠りにつきやすくなる、リラックス効果などが期待できます。的です。

ただし、更年期障害で身体を動かすのもつらい場合は、婦人科で漢方薬やホルモン補充療法を受けると楽になります。体調が悪い時は無理をせず、受診を検討してみてください。

更年期の運動で気をつけたい4つのポイント

更年期の運動で気をつけたいポイントは、以下の4つです。

  • 無理をしない
  • 継続する
  • 必要な栄養をバランスよく摂取する
  • 必要に応じて専門家の助言を受ける

順番にみていきましょう。

無理をしない

普段運動の習慣がない人がいきなり高い負荷の運動をすると、ケガをしやすいため危険です。以下の点に注意し、決して無理はしないでください。

  • 水分補給をおこなう
  • 筋肉を休める日を設ける
  • 準備運動や整理運動をおこなう
  • 息をとめずにゆっくりと呼吸をする
  • 運動中に体調の異変を感じたらすぐに中止する

若いころのスポーツ経験や日頃の運動習慣によって、適切な運動方法や回数は異なります。自分の体調をみながら無理のない程度から始め、少しずつ回数や強度を増やしていきましょう。

また、楽しく続けられる運動を選ぶことも大切です。まずは「楽しむ」という気持ちでいろいろな運動を試し、自分に合うものを探してみてはいかがでしょうか。

継続する

運動で一番大切なのは、「継続すること」です。生活スタイルや体調、個人の好みなどにより、どのような運動方法が適切なのかは人によって異なります。

運動するまとまった時間の確保が難しい場合は、以下のように生活のなかで身体を動かすよう工夫してみましょう。

  • 家事のスキマ時間にストレッチをする
  • 駅でエスカレーターではなく階段を使う
  • 通勤を車から自転車に切り替える

「1日60分」という数値は、ひとつの目標・目安でしかありません。まずは1日5分でもよいので少しでも身体を動かしてみましょう。

運動量を増やすのは、身体を動かすのに慣れてからでも大丈夫です。まずは「無理なく、楽しく続けられること」を一番に考えてみてください。

必要な栄養をバランスよく摂取する

筋肉や骨密度を維持・改善するには、栄養バランスの取れた食事も大切です。
「タンパク質」「炭水化物」「脂質」を、多くの食材からバランスよく摂取しましょう。
更年期にダイエットをする際の食事メニューについては、記事「更年期ダイエットにおすすめの食事メニュー」も参考にしてください。

必要に応じて専門家の助言を受ける

運動をしても体調がよくならない、更年期で体調が悪すぎて運動が難しいなどの場合は、専門家の助言を受けることも大切です。

更年期障害は、漢方薬やホルモン補充療法で改善できます。不安感やイライラなど、気分の落ち込みがつらい場合はカウンセリングも効果的です。

更年期の体調変化がつらい場合は、無理をせず専門家に相談してみてくださいね。

更年期の治療については、「【医師が解説】更年期の治療 - ホルモン補充療法(HRT)と漢方薬」で詳しく説明しています。

無理のない運動を続けて更年期を乗り切ろう

更年期を元気に乗り切るには、適度な運動が欠かせません。

運動習慣のない方は、無理のない範囲から始めて、少しずつ運動強度や回数を増やすのがおすすめです。楽しく続けられる運動を選び、毎日少しずつでも身体を動かすように心がけましょう。

しかし、身体を動かすのもつらいほど更年期障害が重い方や、運動をしても体調の改善が見られない方は、専門家の意見を取り入れることも大切です。自分で抱え込みすぎず、必要に応じて医師へ相談してみてくださいね。

ビバエルは、更年期女性専門のオンライン診療サービスです。

経験豊富な更年期専門の医療従事者が丁寧に症状を聞き取り、ホルモン治療療法や漢方薬、カウンセリングなど、体調に合わせたケアを提案します。

「更年期に入ってから体調不良が続いて困っている」「体調が悪くて受診するのもつらい」と悩む方は、1人で悩まずに気軽にご相談ください。