「体調が悪いけれど、病院ではどこも悪くないと言われた」「できるだけ漢方薬で治したい」などと考えていませんか?

漢方薬はホルモン補充療法と並び、更年期障害の治療によく使われる治療薬です。今回は更年期障害に効く漢方薬を症状別に解説します。

漢方を飲む際の注意点も説明するので、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。

更年期に効く漢方の選び方

症状や血液検査の数値などから薬が決まる「西洋医学」と異なり、「東洋医学」の漢方薬はその人の症状や体質に加えて、体格や声の張り、脈の強さなどから処方が決定されます。

まずは具体的な漢方薬の前に、基本的な知識を簡単に説明します。

更年期については、以下の記事で詳しく説明しています。

内部リンク:【医師監修】更年期とは?

漢方の基本的な考え方「気・血・水」の基本

漢方が処方される「東洋医学」では、以下3つの要素が身体の中を正しく巡り、生命活動が維持されるとされています。

どのようなものか異常によって起こる症状
生命を維持するエネルギー気鬱:気の流れが滞り、気分の落ち込みや不安が起こる
身体を維持する赤い液体血虚:血が不足して、貧血や肌荒れなどが起こる
身体を維持する水分水毒:体内の水の巡りが悪くなり、むくみや冷え、めまいなどが起こる

東洋医学では、病気や体調不良は「胃酸が出すぎている」「ホルモンの乱れ」のような考え方ではなく、上記3つの要素の乱れから来ると考えられているのです。

更年期障害の症状と「気・血・水」

更年期障害で良くあらわれる症状が「気・血・水」におけるどの要素の乱れによって起こるかを、以下にまとめました。

のぼせ・ほてり・発汗・「気」「血」が余って頭にのぼり、熱を持っている
冷え・「気」「血」の流れが悪くなり、水分がたまっている
疲れ・だるさ・「気」「血」「水」が不足して、活力が足りない
イライラ・ストレス・「気」の巡りが悪くなり、身体の一部にたまる
不眠・夜に鎮まるべき「気」からの熱が静まらない

表では簡単にまとめていますが、実際は複数の症状があらわれる人が多くみられます。症状や体質ごとに、さまざまな要因が絡まって更年期症状を悪化させているのでしょう。

漢方薬は、体調不良を起こしている「気」「血」「水」の異常を改善し、更年期症状を改善させるのです。

更年期障害によく使われる漢方を症状別に紹介

更年期障害の治療には、婦人科三大処方と呼ばれる「加味逍遙散(かみしょうようさん)」「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」などの漢方薬がよく使われます。一般的な処方を解説します。

ホットフラッシュ・のぼせ

ホットフラッシュは、更年期障害の一般的な症状です。上半身を中心に起こり、頭に起こった場合を「のぼせ」、顔に起こった場合を「ほてり」、全身に起こった場合を「身体が熱くなる」などと表現します。

ホットフラッシュによく使われる漢方薬は、以下のとおりです。

  • 加味逍遙散(かみしょうようさん)
  • 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
  • 桂枝茯苓丸加よく苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)

順番に解説します。

ホットフラッシュに悩む方は、【医学博士監修】ホットフラッシュに効く食べ物や飲み物は存在する?摂る時の注意点も解説も参考にしてください。

加味逍遙散(かみしょうようさん)

よく使われる人体質が虚弱(弱いこと)で、疲れやすい、精神不安などがある人
つらい症状・冷え性

加味逍遙散は、上半身にたまった「気」を下ろして巡らせ、ほてりやのぼせなどのホットフラッシュを軽減させます。また、不足している「血」をおぎなう効果も期待できます。

加味逍遙散によって「気」の流れが改善すれば、イライラや気分の落ち込みの改善も期待できるでしょう。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

<可能であれば、処方されている薬の写真があると見栄えがよいかなと思います>

よく使われる人体力があり、赤ら顔(顔のほてり)、下腹部に違和感がある人
つらい症状・頭痛

桂枝茯苓丸は、「血」の巡りが悪くて滞り、上半身はのぼせて下半身は冷える人によく使われる漢方薬です。更年期障害では、頭痛、めまい、のぼせなどの上半身の異常によく処方されます。

また、「血」の巡りが悪いと悪化しやすい月経痛や月経困難も、桂枝茯苓丸で改善が見込めるでしょう。

桂枝茯苓丸加よく苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)

よく使われる人比較的体力があり、下腹部痛や肩こり、足冷えなどがある人
つらい症状・頭痛

東洋医学では、身体に「水」や熱がたまって「血」の巡りが悪くなると、頭の重さやめまいがあらわれるとされています。

「桂枝茯苓丸加よく苡仁」は、先ほど説明した桂枝茯苓丸に「よく苡仁」という「水」を整える生薬が加わった漢方薬です。よく苡仁は肌荒れやイボにもよく使われるため、桂枝茯苓丸加よく苡仁には、肌の調子を整える効果も期待できます。

冷え・肩こり・頭痛

ホットフラッシュによって体内の熱が外に出ると、身体の内部に冷えを感じる人もいます。また、肩こりや頭痛なども、更年期の女性によくみられる症状です。

冷え・肩こり・頭痛によく使われる「当帰芍薬散」について、ここでは紹介します。

肩こりや頭痛に悩む方は医師監修】更年期のひどい肩こり - 原因と改善方法」「【看護師が解説】更年期のつらい頭痛 - 原因と対処方法の記事もぜひご覧ください。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

よく使われる人筋肉が少なくて疲れやすく、冷え性の人
つらい症状・頭痛

当帰芍薬散は、「血」が不足して「気」の流れが滞り、冷え性や疲れがつらい人によく使われる漢方薬です。更年期障害に対しては、頭痛やめまい、肩こりなどによく処方されます。

血行をよくして水分の流れを整える効果があるため、むくみを改善する効果も期待できます。

更年期のむくみに悩む方は、「【医師監修】更年期のむくみ - 原因と対処法」もぜひ参考にしてください。

疲れ・だるさ

更年期女性は「いつも疲れている」「朝起きたときからだるい」などに悩む人も多く見られます。

疲れ・だるさによく処方される漢方薬は、以下のとおりです。

  • 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
  • 人参養栄湯(にんじんようえいとう)

それぞれの漢方薬の違いや、特徴を説明していきます。

疲れに悩む方は、「【医学博士が解説】40代女性が感じる「疲労感、身体のだるさ - 隠れた原因と解決策」も参考にしてください。

補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

よく使われる人胃腸の調子が悪く、疲れがたまっている虚弱な人
つらい症状・疲れ

補中益気湯は、不足した「気」を補充して、弱った体力・気力を回復させる漢方薬です。

更年期障害や月経で体力が低下している人や、大きな病気をして体力が落ちている人にもよく使われます。

人参養栄湯(にんじんようえいとう)

よく使われる人体力が落ちており、疲れが取れない人
つらい症状・疲れ

人参養栄湯は「気」「血」の両方をおぎない、体力を回復させる漢方薬です。

名前に「人参」とありますが、含まれているのは野菜の人参ではなく「朝鮮人参」という滋養効果の高い生薬成分です。血をおぎなう効果があるため、月経により貧血が悪化して体調が悪い人にも使われます。

イライラ・ストレス・気分の落ち込み

更年期になると、どうしたらよいか分からないイライラ感や、気分の落ち込みに悩む人もいます。

更年期のイライラやストレス、気分の落ち込みによく使われる漢方は以下のとおりです。

  • 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
  • 加味帰脾湯(かみきひとう)

更年期の心の不調については、医師の対談形式の記事「話そう! 女性のカラダのコト⑨|更年期にみられる「心の不調」」も参考にしてください。

半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)

よく使われる人気分がふさいで、のどの違和感がある人
つらい症状・気分の落ち込み

半夏厚朴湯は、「気」の巡りをよくする漢方薬です。イライラや気分の落ち込み、不眠、のどに詰まった感じのある人によく使われます。

更年期障害や月経前・月経中に気分が落ち込んで悩む女性にも有効な処方です。

加味帰脾湯(かみきひとう)

よく使われる人虚弱体質で血色の悪い人
つらい症状・貧血

加味帰脾湯は、不足している「血」をおぎないながら「気」を巡らせて、不眠や不安症状を和らげる漢方薬です。

女性は月経サイクルや更年期のホルモンのゆらぎにより、眠りや不安が強くなりやすい傾向があります。加味帰脾湯は体調と精神のバランスを整えてくれるため、貧血、不眠、不安などを全体的に改善する処方といえるでしょう。

更年期障害で漢方薬を飲むときの注意点

更年期障害で漢方薬を飲むときは、以下の点に注意しましょう。

  • 自分の判断で複数の漢方を飲まない
  • 副作用が出たら医師に相談する

安全に薬を使うため、ぜひ覚えておいてください。

自分の判断で複数の漢方を飲まない

漢方薬は複数の生薬からできています。そのため、「同じ生薬が含まれており、量が多くなりすぎる」「逆の効果を持つ生薬が含まれている」などの理由で、同時に飲まない方がよい漢方もあります。

つまり、自分の判断で2種類以上の漢方を飲むと、気付かないうちに1日に飲める最大量を越えたり、期待した効果が得られなかったりする可能性があるのです。

安全に薬を使うため「漢方薬は絶対に安全」と思わず、医師の指示した量・飲み方を守って服用しましょう。

副作用が出たら医師に相談する

「西洋の薬よりも安全」「副作用がない」と思う人もいますが、漢方薬にも副作用はあります。

副作用の可能性があるため気を付けたい症状を、以下に紹介します。

  • 発熱
  • 発疹
  • 筋肉痛
  • しびれ
  • 吐き気
  • 息苦しさ
  • こわばり
  • つっぱり感
  • 血圧の上昇
  • 手足のだるさ
  • むくみの悪化
  • だるさの悪化

副作用が悪化すると体調を大きく崩す可能性もあるため、気になる症状が出た場合は、すぐに医師へ相談しましょう。

更年期症状には漢方以外にホルモン療法やカウンセリングも有効

更年期障害の治療法は、漢方薬以外に以下の方法もあります。

  • ホルモン補充療法
  • カウンセリング

また、バランスのよい食生活や適度な運動も、更年期症状の改善に効果があります。

「漢方薬の味が苦手で飲みにくい」「効かなくて症状がよくならない」などの場合は、医師へ気軽に相談してみてください。

ホルモン補充療法については「【医師が解説】更年期の治療 - ホルモン補充療法(HRT)と漢方薬」、カウンセリングについては「ビバエルの看護カウンセリングを詳しく解説」で解説しています。

更年期障害の漢方に関してよくある質問

更年期障害の漢方に関してよくある、以下の質問にお答えします。

  • 含まれている成分の種類が多い方が何にでも効くのではないですか?
  • 更年期でやる気が出ない・何もしたくない場合はどの漢方がよいですか?
  • ホルモンバランスを整える漢方薬はありますか?
  • 更年期障害に効く漢方は市販の商品でもよいですか?

気になる内容を解消し、正しい治療につなげましょう。

含まれている成分の種類が多い方が何にでも効くのではないですか?

漢方薬の成分は「種類が多ければよい」というものではありません。

なぜなら、漢方薬は含まれている成分の数が少ない方が効き目が早く、強くなる傾向があるからです。つまり、含まれる漢方の種類が多いと、1つひとつの生薬は穏やかに効くようになるのです。

漢方薬は、含まれる生薬が「気」「血」「水」のバランスをそれぞれ整えることで効果をあらわします。逆の作用を持つ生薬どうしを服用すると、良い効果が得られないケースもあります。

医師は体質と症状を把握し、どの漢方薬が合うかを考えて薬を処方します。たとえば「むくみがあるから、友達がよいと言っていたこれを追加しよう」のようなことはせず、医師が処方した飲み方を守って服用してください。

更年期でやる気が出ない・何もしたくない場合はどの漢方がよいですか?

更年期でやる気が出ない・何もしたくないなどの精神的症状が出ている場合、以下のような漢方がよく処方されます。

  • 加味逍遙散
  • 当帰芍薬散
  • 桂枝茯苓丸

ひと言に「やる気が出ない」といっても、体格や体質によって適した薬は異なるため、医師に相談してみるとよいでしょう。

更年期の「やる気が出ない」「何もしたくない」の原因や対象法は、「【医学博士が解説】更年期の「やる気が出ない」「何もしたくない」原因と対処法」で解説しています。

ホルモンバランスを整える漢方薬はありますか?

漢方薬は、西洋薬の「ホルモン剤」のように、直接的にホルモンバランスに作用する薬ではありません。

しかし、服用によって「気」「血」「水」のバランスが整えば、結果的にホルモンバランスが整った状態となるでしょう。

更年期障害に効く漢方は市販されている商品でもよいですか?

医療用の漢方と同じ成分が市販されているケースもありますが、できる限り受診し、医師の指示を受けましょう。

理由は、以下2つが挙げられます。

  • 個人の体質や体調によって合う薬は異なるから
  • 市販の漢方は医療用よりも成分量が少ないものもあるから

同じ人でも、その時の症状によって適した薬は異なります。以前処方された薬と同じものを市販で買うのではなく、現在の症状に合わせた薬を処方してもらうようにしましょう。

漢方を上手に使って更年期を乗り切ろう

更年期障害には「加味逍遙散」「当帰芍薬散」「桂枝茯苓丸」の婦人科三大処方や、症状に応じたさまざまな漢方薬が処方されます。

細胞の単位で科学的に人体や薬をとらえて治療する西洋医療と異なり、「気」「血」「水」という3要素を整えるのが、東洋医学による漢方薬の特徴です。漢方薬で更年期障害を治療したい方は、気軽に医師へ相談してみてくださいね。

ビバエルは、更年期女性専門のオンライン診療サービスです。

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「このつらい症状、漢方でよくなるのかな」と悩む方は、ぜひ気軽にご相談ください。