「最近、おりものが増えた気がする」「においが気になる」そんなふうに感じていませんか。
更年期になると、女性ホルモンの減少にともない女性の体は大きく変化します。
更年期症状として有名なほてりや気分の落ち込みなどに加えて、なかにはおりものの変化を感じる方もいます。
この記事では、更年期に見られるおりものの変化や、受診すべきおりものの状態などをわかりやすくご紹介します。

おりものとは
おりものとは、膣、子宮頚管などからの分泌物です。
通常は白色または透明でねばねばしており、ほぼ無臭またはやや酸っぱいにおいです。通常のおりものは、膣から出るまであまり気づかれることはありません。
1日あたりの正常なおりものの量は、1〜6ml程度が目安です。ただし、女性によって個人差があり、月経周期の段階によっても変化がみられます。たとえば、排卵前はエストロゲンの作用によって受精を助ける「子宮頚管粘液」という分泌液が増え、ゼリー状のおりものが増えます。
また、女性の膣内はエストロゲンによってpH3.5~4.5の酸性に保たれ、デーデルライン桿菌という乳酸菌の一種で占められています。
その結果、雑菌や病原菌が繁殖しにくい環境が保たれているのです。
更年期によくあるおりものの変化
更年期は生理の変化が起こる時期ですが、おりものにも変化がみられます。
更年期のおりものの変化について、説明します。
更年期に起こる生理の変化については、以下の記事をぜひ参考にしてください。
【医学博士監修】更年期に起こる生理の変化|受診すべき症状も解説
更年期のおりものの変化
更年期とは、閉経を挟んだ前後10年間です。女性ホルモンの影響を受けるため、閉経が近くなるとおりものは徐々に少なくなります。
また、おりものの違和感や不快感には個人差があり、普段の生活の変化や精神的な状態によっても変化します。
普段のおりものの状態に注意を払うことで、ホルモンバランスや体調の変化に早く気づけるでしょう。
更年期に起こる全般的な体調変化については、以下の記事もぜひ参考にしてみてください。
気を付けた方がよい変化
膣内に異常が起こった場合も、おりものの変化があらわれることが多く見られます。
そのため、以下のようなおりものの変化が見られる場合、膣や子宮内に問題が起きている可能性があります。
- おりものがいきなり増えた
- 色が大きく変わった
- おりものにデリケートゾーンのかゆみやヒリヒリ感をともなう
更年期になって女性ホルモンの分泌が低下すると、細菌感染が起こりやすくなります。
つまり、更年期のおりものの変化は、からだからのSOSである可能性もあるのです。
早めに受診すべきおりもの状態
おりものの状態が普段と変化し、以下のようになった場合は早めの受診をおすすめします。
- 白くてヨーグルト状のおりものが出る
- 黄色くてにおいの強いおりものが出る
- おりものの量が増えた
- 白~灰色っぽくてにおいの強いおりものが出る
- 黄色・茶色・薄い水色っぽいおりものが出る
- おりものの量が増えて不正出血もある
ご自分に当てはまるものがないか、順番にチェックしてみましょう。
白くてヨーグルト状のおりものが出る
白くてヨーグルト状、無臭のおりものが出る場合は、「カンジダ膣炎」の可能性があります。
デリケートゾーンが赤くなったり、かゆみやヒリヒリ感が出たりするのもカンジダ膣炎によくみられる症状です。
カンジダ膣炎は、真菌(カビの一種)である「カンジダ」が、膣内で異常に増殖することで起こる炎症です。
カンジダは通常、膣内に存在する常在菌のひとつで、健康な状態で症状を起こすことはほとんどありません。しかし、体調の変化や、抗菌薬の内服などで膣内の環境が乱れると、カンジダが増殖し、症状を引き起こすことがあります。
特に「デーデルライン桿菌」と呼ばれる乳酸菌が減少すると、膣内の自浄作用が低下し、カンジダ膣炎が起こりやすくなります。
治療には、抗真菌薬の膣内投与剤(膣錠)や外用薬(塗り薬)を用いることが一般的です。また、繰り返し起こる場合は、腸内細菌を整えることをすすめられる場合もあります。
黄色くてにおいの強いおりものが出る
においが強く、黄色っぽくて泡立ったようなおりものが出る場合は、「トリコモナス膣炎」の可能性があります。
おりものの量が増えたり、デリケートゾーンにかゆみ・赤みなどが出たりしますが、症状がまったくあらわれないケースもあります。
トリコモナス膣炎は、「膣トリコモナス」という原虫が原因でおこる性感染症のひとつです。治療には、抗原虫薬(原虫に効果のある薬)の内服薬や膣内に使用する薬が使われます。
また、パートナーがいる場合は、再発を防ぐためにお互いに検査や治療を一緒に受けることが大切です。
おりものの量が増えた
おりものの量が明らかに増えた場合、「クラミジア頸管炎」や「淋菌性頸管炎」といった感染症が関係している可能性があります。
クラミジア頸管炎は、「クラミジア」という病原体による感染症です。女性では自覚症状が出にくいことが多く、気づかないうちに子宮頸管から卵管、骨盤内へと感染が広がるおそれがあります。抗菌薬の内服で治療します。
また、淋菌性頸管炎は「淋菌」という細菌によって起こる感染症で、女性では子宮頸管に炎症を引き起こします。ただし、こちらもクラミジアと同様に、症状が軽く気づかれにくいことがあります。
淋菌性頸管炎も、抗菌薬の投薬で治療をおこないます。
これら2つの感染症は、同時に感染していることも少なくありません。パートナーとの間で感染を繰り返すケースもあるため、お互いに検査を受け、同時に治療を受ける必要があります。
気になるおりものの変化があれば、早めに産婦人科を受診しましょう。
白~灰色っぽくてにおいの強いおりものが出る
においが強く、白~灰色っぽいもしくは黄色っぽいおりものが出る場合、「細菌性膣症」の可能性があります。
これは、膣内の大部分を占める「デーデルライン桿菌(乳酸菌)」が減少し、普段は抑えられている別の細菌が増えることにより起こる状態です。
おりものの変化のほかに、デリケートゾーンのかゆみやヒリヒリ感、性交痛などをともなうケースもあります。
細菌性膣症は、感染性の膣炎の40~50%を占めるとも言われており、比較的よく見られる疾患です。症状に気付いた場合は、悪化を防ぐために早めに産婦人科を受診しましょう。
黄色・茶色・薄い水色っぽいおりものが出る
不正出血や、黄色・茶色っぽい、または薄い水色のおりものが見られる場合、萎縮性膣炎(閉経関連尿路性器症候群:GSM)の可能性があります。
色の異常に加えて、おりものの悪臭や膣の圧迫感、外陰部の乾燥感をともなうケースもあります。
この症状は、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少して膣の粘膜が薄くなり、炎症が起こりやすくなって発症すると考えられています。
閉経後の女性に多く見られますが、閉経前の更年期女性に起こるケースもあります。
おりものの量が増えて不正出血もある
おりものの量が増えて不正出血もある場合、子宮頸がんや子宮体がんなどの婦人科系疾患が関係していることがあるため、注意が必要です。
どちらのがんも、茶色っぽいおりものとして不正出血が見つかることが多くありますが、おりものの量や性状に変化が見られるケースもあります。
また、がんができて感染も起こると、おりもののにおいが強くなったり膿状のおりものが出たりすることも少なくありません。
子宮頸がん・子宮体がんはいずれも早期に発見して治療を行うことで予後の改善が期待できます。
そのため、自治体などで実施されている子宮がん検診を定期的に受けるとともに、気になる症状がある場合は自己判断で様子を見ず、早めに産婦人科を受診することが大切です。
更年期のおりものの対処法
更年期のおりものの対処法を、2つご紹介します。
汚れないようにシートを利用する
衣服や下着の汚れが気になる場合、シートを使う方法があります。
ただし、一般的なおりものシートは、デリケートゾーンが蒸れて膣内の環境が乱れる可能性があるため、使用する場合は布製のおりものシートがおすすめです。
刺激の少ない商品を選んでこまめに取り替え、清潔にを保つよう注意しましょう。
また、尿漏れが気になる人は、尿漏れ用のシートを使う方法もあります。
あわせて、ホルモン補充療法や骨盤底筋トレーニングなどにより尿漏れを改善するのも効果的です。
骨盤底筋トレーニングについては、以下の記事もぜひ参考にしてください。
デリケートゾーンの正しいケアと保湿をおこなう
おりものが気になると、ゴシゴシと石鹸で洗ってしまう方は珍しくありません。しかし、その結果、さらにデリケートゾーンの環境が乱れておりものの状態やかゆみ・ヒリヒリ感が悪化することもあります。
デリケートゾーンの状態が気になる際は、専用の低刺激なソープを使ってやさしく洗うのがおすすめです。
膣内に使えるフェムケア用の保湿剤を使用する方法もありますが、一般的に販売されている商品はおすすめしません。
とくに、エストロゲン低下にともなう膣の違和感には、処方薬のエストロゲン膣錠が効果的な場合もあります。
自己判断で市販品を使用するのではなく、気になる症状があれば産婦人科で相談してみましょう。
デリケートゾーンのケアについては、以下の記事もぜひ参考にしてください。
【看護師が解説】更年期のデリケートゾーン(フェムゾーン)の悩みとケアの必要性
毎日の生活をととのえる
おりものの感じ方は、生活環境や精神的な状態によっても変わることがあります。そのため、毎日の生活を整えることで、おりものが気になりにくくなるケースも少なくありません。
まずは、規則正しい食生活や十分な睡眠を心がけることが大切です。
また、更年期は、ホルモンバランスの変化により心身ともに揺らぎやすい時期でもあります。
「おりものの状態が普通なのか、それとも何か問題があるのか不安…」と感じたときは、ひとりで悩まずに産婦人科で相談してみましょう。
生活習慣や心のバランスについてのアドバイスも受けたい場合は、看護カウンセリングを活用するのも一つの方法です。
更年期のおりもの変化が気になる場合は相談しよう
更年期は、女性ホルモンの変化にともない、おりものに変化があらわれる時期です。
こうした変化の多くは体の自然な反応であり、すべてが病気というわけではありません。
しかし、おりものの変化のなかには、感染症や婦人科系疾患が隠れている場合もあるため、「いつもと違う」と感じたら、早めに産婦人科で相談することが大切です。
また、正しいセルフケアや生活習慣の見直しによって、不快な症状が軽減されることもあります。
不安を抱えたままにせず、医師や看護師と一緒に、ご自身の体と向き合っていきましょう。
ビバエルは、更年期女性のためのオンライン診療サービスです。
「この体調変化は自然なもの?」「楽にする方法はある?といった、更年期女性の不安にしっかりと寄り添い、体調に合わせた治療を提案します。
おりもの変化を含む更年期の体調にお悩みの方は、ぜひ一度相談してみてください。