「生理がきていないのに、なぜか胸が張って痛い…」
「ブラジャーが触れるだけでも違和感がある」
などと、不安に思っていませんか？
40代から50代にかけて、これまでになかった胸の張りや痛みを感じ、不安に思われる方は少なくありません。これは更年期によく見られる変化の一つですが、中には注意が必要なケースもあります。
この記事では、更年期に起こる胸の張りや痛みの原因を医学的な視点から解説し、考えられる病気や対策などを解説します。
更年期に胸が張る・痛くなるのは普通？更年期の体に起きていること
更年期に胸の張りや痛みが起こるのは、決して珍しいことではありません。
更年期は、女性ホルモンである「エストロゲン」と「プロゲステロン」の分泌量が大きくゆらぎながら減少していく時期です。
胸の張りや痛みを感じる主な原因は、女性ホルモンの変動とされています。特に、閉経に向けて卵巣機能が低下することで起こるホルモンバランスの乱れが大きく関わります。
ここからは、更年期に起こる身体の変化と胸の張り・痛みについて解説します。
痛みに敏感になりやすい時期
閉経が近づくと、身体のなかでは女性ホルモンの分泌が大きく変化します。
女性ホルモンは、セロトニンを始めとする神経伝達物質に関与し、痛みの感じ方を調整する働きがあるとされています。更年期にホルモンの分泌が減少することで、本来なら抑えられていた痛みの刺激に対して敏感に反応しやすくなる場合があるのです。
敏感になったため、今までは気にならなかった程度の刺激でも、「張り」や「チクチクした痛み」として感じやすくなる方もいます。
ホルモンのゆらぎで症状が不安定になる
更年期には、今まで生理周期に沿って規則的に起こっていた女性ホルモンの波が、予測できないタイミングで起こるケースがあります。
これは、エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンの分泌が不規則になるためです。
本来であれば、生理前だけ感じていた乳腺の刺激による張りやむくみが、周期に関係なく突然出るようになったり、ずっと続くように感じたりすることもあります。
更年期の生理の変化については、【医学博士監修】更年期に起こる生理の変化｜受診すべき症状も解説 で詳しく解説しています。
痛みのタイプで原因が見えてくるかも
胸の痛みは、大きく分けて以下の2種類があります。
| 起こるタイミング | 痛みがでやすい場所 | |
|---|---|---|
| 周期的な痛み | 月経のタイミングで起こる | 両方の胸 |
| 非周期的な痛み | 月経とは関係なく起こる | 両方の胸とは限らない |
非周期的な痛みは、閉経後に起こりやすくなります。まずは月経周期と痛みの関係を振り返ってみるのもよいでしょう。
ただし、自己判断が難しい場合も多いため、気になる変化があるときは早めに医療機関へ相談することをおすすめします。
更年期に胸が張る・痛む病気と特徴
更年期の胸の張りや痛みの多くはホルモンバランスの変化によるものですが、中には以下のような病気が隠れている可能性もあります。
- 乳腺症
- 乳腺炎
- 高プロラクチン血症
- 乳がん
順番に見ていきましょう。
乳腺症
乳腺症とは、胸の痛みやしこり、乳頭からの分泌物などが見られる、30代～40代の女性に起こりやすい良性の病気です。しこりと言うと悪性の腫瘍である「がん」を連想するかもしれませんが、乳腺症によるしこりは良性のため命に関わるものではありません。
乳腺症の原因は、ホルモンバランスの乱れによってエストロゲンが過剰になることとされています。症状があらわれる場所は人によって異なり、左右両方にあらわれることもあれば、片側のみのこともあります。
胸の痛みやしこりが乳腺症によるものなのか、がんを始めとする治療が必要な病気によるものなのかを自分で判断することは困難です。胸の違和感がある場合は、乳がんの検査ができる産婦人科や乳腺外来の受診を検討しましょう。
乳腺炎
乳腺炎とは、乳腺に起こる炎症のことです。出産後、母乳が乳腺内に溜まって炎症を起こすケースが良く知られていますが、乳管や乳頭にできた傷から細菌が入って起こるケースもあります。
乳腺炎の特徴は、胸の強い張りや痛み、熱を持ったような感覚をともなうことです。腫れや痛みは胸だけにとどまらず、わきのリンパ節まで広がる場合もあります。胸の張りに加えて、強い痛みや熱をともなう場合は、早めに産婦人科や乳腺外来を受診しましょう。
高プロラクチン血症
高プロラクチン血症とは、母乳の分泌をうながす「プロラクチン」というホルモンが過剰になり、胸の張りや月経異常、授乳中でないのに母乳が分泌されるなどの症状があらわれる病気です。
通常、ホルモンの分泌は調節されており、妊娠中や出産後以外は血液中のプロラクチンは低く抑えられています。しかし、何らかの異常によってホルモン分泌のバランスが崩れるとプロラクチンが過剰になるケースがあるのです。
高プロラクチン血症の背後に、プロラクチノーマをはじめとする腫瘍や、甲状腺という器官の異常が隠れているケースも考えられます。また、抗精神病薬や胃腸薬の一部には、プロラクチンに影響するものもあります。
胸の張りとともに、月経異常や母乳の分泌が見られる場合も受診をおすすめします。
乳がん
更年期に感じる胸の張りは、乳がんの初期症状である可能性もあります。
乳がんの初期症状は、胸のしこりや乳頭からの分泌物、皮膚のひきつれなどで、なかには胸の張りを感じる人もいます。乳がんは早期に治療するほど再発や転移の可能性が低くなり、治療による身体や費用の負担も軽く済みます。
気になる症状が出たら受診するのはもちろんですが、乳がんの早期発見には「乳がん検診」「セルフチェック」の2つも大切です。
40歳を過ぎると、自治体から2年に1回マンモグラフィによる乳がん検診のお知らせが届くようになります。検査が無料になるクーポン券を配布している自治体もあるため、検診のお知らせが届いたらチェックしてみてください。
また、乳がんの発見にはセルフチェックも大切です。「毎月1日」「給料日の20日」のように日にちを決めて、毎月決まった日に自身の胸に異常がないか確認してみましょう。
自宅でできるセルフチェックを、以下に紹介します。
| 鏡の前でできるチェック | 胸の大きさや形に変化がないか |
|---|---|
| あおむけ体勢でできるチェック | 背中の下に低い枕や折ったタオルを入れ、胸にしこりがないかを触る |
| わきの下や乳頭のチェック | 左右のわきの下にしこりがないか |
実は、更年期は乳がんの発生が増え始める時期でもあります。胸の張りやしこりなどが気になったときは受診し、定期的な乳がん検診とセルフチェックもおこない乳がんの早期発見・治療につとめましょう。
更年期の胸の張りを和らげる対処法
ホルモンバランスによる一時的な胸の張りや痛みがある場合、以下の方法で和らぐ場合があります。
- 冷えと締め付けを避ける
- 生活習慣を整える
- ストレスを溜めない
- 産婦人科へ受診する
順番に説明します。
冷えと締め付けを避ける
冷えは体調を崩したり、血流や代謝に影響を及ぼしたりする可能性があります。なるべく温かい飲み物を選んだり、寒い季節には重ね着や温かいインナーを活用したりして、身体を冷やさない工夫をしましょう。
また、サイズが合わない下着によって胸を締め付けるのも、胸の違和感や張り感につながります。下着のサイズが合わない場合、一度お店でフィッティングして自分に合うサイズを選んだり、ノンワイヤーのタイプを選んだりするのもよいでしょう。
生活習慣を整える
規則正しい生活や栄養バランスのとれた食事は、ホルモンバランスを整えるうえで大切な要素です。ビタミンやタンパク質、食物繊維などをしっかり摂れるよう、野菜や魚類なども積極的に取り入れましょう。
また、痛みを感じやすくなっている場合、カフェインやアルコール、タバコなどをやめてみるのもひとつの方法です。もしやめることで痛みが軽減されれば、やめたものが胸の張りに悪影響を与えていた可能性が考えられます。
胸の張りに影響するような生活習慣がないか一度振り返ってみて、できることから少しずつ見直していきましょう。
ストレスを溜めない
ストレスは、自律神経やホルモンのバランスを崩す原因となります。
自分に合った方法でリフレッシュしながら、ストレスをため込まないよう意識してみましょう。たとえば、趣味に打ち込む、深呼吸や軽い運動などで気分転換するなどもおすすめです。
また、無理をせずに頑張りすぎないことも大切です。信頼できる人に悩みを打ち明けたり相談したりするだけでも、気持ちが軽くなることがあります。
産婦人科へ受診する
痛みが強くてつらい場合、産婦人科での治療が有効な場合もあります。
産婦人科でおこなう治療の例を以下に紹介します。
- 痛み止めの処方
- ホルモン補充療法の実施
- 漢方薬の処方
胸の張りに加えてほてりや疲れやすさなどがある場合、更年期障害の治療が有効な可能性もあります。
体調のつらさが続く場合は、産婦人科への相談を検討するのもひとつの方法です。
ホルモン補充療法や漢方薬については、以下の別記事で紹介しています
【医学博士監修】ホルモン補充療法の効果が出るまで - 効果・やめどきなども解説
【医師監修】更年期障害に効く漢方を症状別に紹介！飲むときの注意点は？
「気持ちのつらさ」が胸の張りに影響することも
更年期は身体だけでなく仕事や家庭環境の変化が起こりやすく、精神的なストレスが重なりやすい時期です。
個人差があるものの、強いストレスは自律神経を乱し、ホルモンバランスを崩す可能性もあります。
また、更年期特有の気分の落ち込み・イライラ・孤独感・不安などが、胸の張りや違和感としてあらわれるケースも珍しくありません。心と身体の不調は、密接につながっているのです。
更年期の気分の不調については、【医学博士監修】更年期に急に不安感に襲われる - その原因と和らげるための対処法の記事で原因・対処法などを紹介しています。
セルフケアの延長線「看護カウンセリング」
セルフケアで改善しない場合は、専門家のサポートを利用するのも一つの方法です。ここからは、ビバエルが提供している「看護カウンセリング」についてご紹介します。
看護カウンセリングとは
看護カウンセリングとは、医学的な知識を持つ医療従事者が悩みを聞き、心やからだの不調に寄り添うサービスです。病気のことだけでなく、生活習慣やストレス対処法、生活の悩みなど、不調につながる幅広い相談に対応します。
ビバエルの看護カウンセリングについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
看護カウンセリングがおすすめな方
ビバエルの看護カウンセリングは、以下のような方に喜ばれています。
- 更年期の症状がつらく、どう対処したらよいかわからない方
- 自分の症状（胸の張り）が更年期によるものか、他の病気か不安な方
- 医療機関を受診するべきか迷っている方
- 家族や友人には話しにくい心や体の悩みを抱えている方
- 生活習慣の改善やストレスケアについて、具体的なアドバイスが欲しい方
- オンラインで気軽に専門家に相談したい方
更年期の体調不良は個人差が大きく、自分の体調をうまく説明できなかったり、体調不良の奥にある悩みに気づいていなかったりする方も少なくありません。
看護カウンセリングでじっくりとお話を聞くことで、不調の背景にある要因を整理し、適切な対応につなげることが可能です。
当サイトでは更年期障害の体験談も紹介しています。もしかしたら、毎日をラクに過ごせるヒントが隠れているかもしれません。
更年期の胸の張りに関してよくある質問
更年期の胸の張りに関してよくある質問にお答えします。
更年期の胸の張りはいつまで続く？
病的なものでない胸の張りは、閉経して数年経ちホルモンバランスが安定すると気にならなくなるケースが多くみられます。
ただし個人差があるため、張りが続いたり強まったりする場合は受診しましょう。
更年期の終わりについては、【医学博士が解説】更年期の「終わりのサイン」とは？更年期との付き合い方 もぜひ参考にしてください。
乳がんとの見分け方は？
胸の張りは個人差があり、個人が乳がんによる張りと問題のない張りを見分けるのは困難です。
乳がんで無いかを確認するには、触診やマンモグラフィー、エコー検査などをおこない、しこりの有無や状態を確認する必要があります。
セルフチェックとともに定期的な乳がん検診を心がけましょう。
更年期で胸が大きくなることってある？
ホルモンバランスの変化や更年期による体重増加などによって、胸が大きくなるケースは考えられます。ただし、個人差があり、なかには更年期により胸が小さくなる人もいます。
胸の大きさの変化について気になる場合は、一度受診して病気が隠れていないか確認するのが安心です。
なお、更年期の体重増加については、【医学博士監修】更年期に体重増加が止まらないのはなぜ？40代、50代女性の原因とダイエット法も解説 もぜひ参考にしてください。
胸の張りや不安は一緒に向き合っていけます
更年期の胸の張りは、ホルモンバランスの変化にともなう一時的なものであるケースが多くみられます。ただし、乳がんを始めとする病気が隠れている可能性もあるため、気になる症状がある場合は受診し、治療が必要な病気でないかを確かめることが大切です。
また、更年期によるホルモンバランスの変化により気持ちにゆらぎが生じ、胸の張りを感じるケースもあります。
もし更年期の心や体のゆらぎについて相談先に迷われている場合は、ビバエルのご利用もぜひご検討ください。
ビバエルは、更年期女性のためのオンライン診療サービスです。丁寧な看護カウンセリングと診察により、更年期女性の悩みや変化に寄り添っています。
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