ホルモン補充療法は、漢方薬と並び、更年期障害によく使われる治療薬です。
「実際にどのくらいの期間で効果が出るのだろう」「自分に向いているのかな」などと気になる方もいらっしゃるでしょう。
ホルモン補充療法は比較的効果が早く得られる治療法ですが、個人差や注意点もあります。
この記事では、ホルモン補充療法の効果が出るまでの期間や、治療法、効果が出にくい人やその場合の対処法をご紹介します。

ホルモン補充療法の効果が出るまでは1~2週間
ホルモン補充療法の効果が出るまでの期間の目安は、以下のとおりです。
- 1~2週間:変化を感じはじめる
- 数ヶ月:自分らしさを取り戻す
ただし、更年期障害の重さや症状はさまざまで、効果が出るまでの期間には個人差が大きいのも事実です。また、カウンセリングや漢方薬との併用で、症状がより早く楽になる人もいます。気になることがあれば、気軽に医師へご相談ください。

ホルモン補充療法とは
ホルモン補充療法とは、更年期を迎えて低下した女性ホルモン(エストロゲン)を補う治療法です。女性ホルモンの低下による不快な症状を抑え、毎日を健康に過ごせるように助ける効果があります。
ホルモン補充療法が有効な更年期障害の症状は、以下のとおりです。
- 精神的症状(気分の変動、イライラ、軽度の不安感、不眠など憂うつ・イライラ・不安・不眠など)
- 血管運動神経症状(ホットフラッシュ・ほてり・発汗・冷え)
- 自律神経症状(動悸・頭痛・吐き気・息切れ・めまい)
- 泌尿器・生殖器症状(頻尿・尿漏れ・外陰部違和感・性交痛)
- からだの痛み(肩こり・腰痛・関節痛)
- 疲労倦怠感
現在、日本では「飲み薬」「貼り薬」「塗り薬」の3タイプの女性ホルモン製剤がおもに使われており、医師は患者さんの希望や体質を考慮して薬を選択しています。
ホルモン補充療法の薬の使い方
ホルモン補充療法は、子宮の有無により以下2種類の薬の使用法があります。
| 子宮がある場合 | エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2種類の女性ホルモンを合わせて使用する |
| 子宮がない場合 | プロゲステロン(黄体ホルモン)は使用せず、エストロゲン(卵胞ホルモン)のみを使用する |
子宮がある方は、閉経しているか、定期的な出血をさせるかなどにより、以下のようにさまざまな方法から処方を決定します。
| 薬の使い方 | 月経のような出血 | おもに処方する方 | |
|---|---|---|---|
| 周期的 併用投与法 | 【間欠法】 エストロゲン(卵胞ホルモン)を21~25日服用し、5~7日休薬する。プロゲステロン(黄体ホルモン)は10~12日服用する。 【持続法】 エストロゲン(卵胞ホルモン)は毎日服用し、プロゲステロン(黄体ホルモン)は12~14日服用する。 | あり | 閉経前後の方 |
| 持続的 併用投与法 | エストロゲン(卵胞ホルモン)・プロゲステロン(黄体ホルモン)のどちらも毎日服用する。 | なし | 閉経後の方 |



どの方法が適しているかは、年齢や月経の状況、体調によって異なります。医師は、生理に関する希望も聞いて処方を決定するため、遠慮せずに希望を伝えるようにしましょう。
ホルモン補充療法の副作用
ホルモン補充療法のおもな副作用は、以下のとおりです。
- 不正出血
- 乳房の張りや痛み
- 腹部の張り
- 吐き気
- おりもの
副作用には個人差があり、徐々に気にならなくなるケースが多く見られます。ただし、副作用がつらい場合は薬の調整やほかの治療法を試した方がよいかもしれないため、我慢しすぎずに相談しましょう。
ホルモン補充療法ができない人
以下に当てはまる方は持病を悪化させる可能性があるため、ホルモン補充療法はおこなえません。
- 重度の活動性肝疾患
- 現在の乳がんとその既往
- 現在の子宮内膜がん、低悪性度子宮内膜間質肉腫
- 原因不明の不正性器出血
- 妊娠の疑い
- 急性血栓性静脈炎または静脈血栓塞栓症とその既往
- 心筋伷塞および冠動脈に動脈硬化性病変の既往
- 脳卒中の既往
その他にも、コントロール不全な糖尿病や高血圧、片頭痛、血栓症のリスクがある方などはホルモン補充療法が適しているかを慎重に見極める必要があります。
現在治療中の病気や、過去に大きな病気をした方は、必ず受診時に伝えるようにしてください。
ホルモン補充療法をしても効果が出にくいケースもある
更年期障害は、以下3つの要因が組み合わさって起こります。
- 身体的要因:女性ホルモンの減少など
- 社会的要因:家庭や職場環境など
- 心理的要因:ストレスの受け止め方や性格など

ホルモン補充療法は、3つの要因のうち「身体的要因」にアプローチする治療です。そのため、女性ホルモンを補って身体的要因が解決しても、社会的要因・心理的要因の影響で症状が改善しにくいケースもあるのです。
女性の気分や健康状態には、ホルモンレベルだけでなく社会的・心理的要因も大きな影響を及ぼします。更年期障害がつらい場合は、ホルモン補充療法の検討に加えて普段の環境や気持ちのあり方なども見直してみましょう。
ホルモン補充療法の効果が出にくいケース5選と対策
以下の女性は、ホルモン補充療法の効果が出にくく「薬が効かない」と思う可能性があります。
- 記憶力や集中力の低下に苦しみながら職場で頑張る女性
- 栄養面で問題を抱えている女性
- 鉄欠乏性貧血を抱えている女性
- うつ病・不安障害などの精神・心理的な問題を抱えている女性
- 休息を取らずに自分を酷使している女性
当てはまる女性におすすめの対策もあわせて紹介します。ぜひ参考にしてください。
1. 記憶力や集中力の低下に苦しみながら職場で頑張る女性
記憶力や集中力の低下に苦しみながら職場で成果を求められる女性には、ホルモン補充療法だけでなく追加の配慮が必要です。
更年期によるエストロゲン減少で自律神経が乱れ、記憶力や集中力が乱れる人は珍しくありません。ホルモンバランスの乱れた状態で頑張り続けると、自信喪失や精神状態の悪化につながり、体調がより悪化しやすいのです。
ホルモン補充療法で身体的な症状が改善しても、「自分を取り戻した」と実感するまでには数ヶ月かかるケースもあります。そのため、カウンセリングによる自分の体調の把握や、不安感の解消、生活へのアドバイスが非常に重要となります。
更年期と仕事については、【医学博士が解説】更年期と仕事 - 乗り越える方法も参考にしてください。
2. 栄養面で問題を抱えている女性
身体に栄養が足りないと、ホルモン補充療法の効果が出にくくなります。そのため、栄養面で問題のある人は、体調の回復に時間がかかります。
忙しさや体調の悪さにより十分な食事・栄養を取れていない人は、忙しい、疲れている、食欲がないなどの状況でも継続的に栄養価の高い食事を摂れるよう、食生活を見直してみましょう。
3. 鉄欠乏性貧血を抱えている女性
鉄欠乏や鉄欠乏性貧血を抱える人も、ホルモン補充療法だけでは体調が回復しないケースがあります。なぜなら、鉄分の不足は更年期症状をさらに悪化させるためです。
実は、更年期の移行期に「過多月経(経血が多く、日常生活に支障をきたすこと)」を経験したり、慢性的に鉄が不足したりする女性は珍しくありません。
ホルモン補充療法に鉄欠乏を直接解消する効果はないため、気分や体調が良くなるまでには数ヶ月の追加期間が必要です。
鉄が欠乏している場合、以下のような方法をすすめるケースもあります。
- 鉄分の多い食品を取り入れる
- 鉄剤や鉄分を含むサプリメントなどを服用する
レバーやかつお、納豆、小松菜などは、鉄分を多く含むためおすすめです。また、ヘモグロビンの材料になるたんぱく質や、鉄の吸収を高めるビタミンCの摂取も欠かせません。
鉄欠乏を予防・改善するには、ひとつの食材にかたよらないバランスの良い食生活を心がけてみてください。
4. うつ病・不安障害などの精神・心理的な問題を抱えている女性
うつ病、重度の不安障害、パニック障害などの精神的・心理的な問題を抱えている方は、ホルモン補充療法に加えて精神科での治療が必要です。
症状が軽度の場合でもカウンセリングが必要で、回復には通常より数ヶ月長くかかるケースもあります。
不安感が強い方は、更年期に急に不安感に襲われる - その原因と和らげるための対処法の記事も参考にしてください。
5. 休息を取らずに自分を酷使している女性
休息を取らずに自分を酷使している女性も、ホルモン補充療法だけで症状が改善しないケースがよく見られます。
たとえば、家事や職場で膨大な責任を抱えながらマルチタスクをこなしている方、睡眠時無呼吸症候群のような深刻な睡眠障害を抱えている方などもいます。その場合、ホルモン補充療法を受けながら「やらなければならないこと」を何とかこなしている(こなせてる)状況になりがちです。
女性ホルモンを補充しても、疲れが完全に回復するわけではありません。できる限りの休息を取ることが、毎日の健康には非常に大切です。
休息する時間を増やせない場合は、睡眠の質を高める、自分自身の心と向きあいセルフケアをするなどの方法もおすすめです。
更年期の不眠は【医師監修】更年期の不眠はいつまで続く?不眠の改善方法をご紹介、疲労は【医学博士が解説】40代女性が感じる「疲労感、身体のだるさ - 隠れた原因と解決策」もぜひお読みください。
ホルモン補充療法についてよくある質問
ここからは、ホルモン補充療法についてよくある以下の質問にお答えします。
- ホルモン補充療法で太らないためにはどうしたらよいですか?
- ホルモン補充療法をすると乳がんになりやすくなりますか?
- ホルモン補充療法に若返りの効果はありますか?
- ホルモン補充療法のやめどきはいつですか?
順番に解説します。
ホルモン補充療法で太らないためにはどうしたらよいですか?
「ホルモン補充療法で体重が増加しやすくなる」という科学的根拠はありません。閉経期に体重が増加しやすい方もいますが、それは女性ホルモンを使用しているかどうかに関係なく起こり得ることです。
大切なのは、バランスの取れた食事を心がけ、定期的な運動をおこない、食事やアルコールに頼らないストレス解消法を見つけることです。
更年期ダイエットについては、更年期ダイエットにおすすめの食事メニューは?避けたいポイントも解説、40~50代の更年期女性におすすめの運動 - 筋トレ・有酸素運動の記事も、ぜひ参考にしてください。
ホルモン補充療法をすると乳がんになりやすくなりますか?
ホルモン補充療法による乳がん発症リスクを、過度に恐れる必要はありません。
ホルモン補充療法と乳がんについては、以下のような内容が分かっています。
- ホルモン補充療法の実施が5年未満
ホルモン補充療法をしない場合と明らかなリスクの差はない - ホルモン補充療法の実施が5年以上
アルコール摂取・喫煙・肥満などによるリスクと同じくらいか、低い程度のリスクしかない
なお、ホルモン補充療法をしているかどうかに関係なく、女性の9人に1人が乳がんになるといわれています。更年期に差し掛かった女性は、定期的に乳がん検診を受けるようにしましょう。
ホルモン補充療法に若返りの効果はありますか?
エストロゲンには、「心血管系の健康維持」「骨密度の維持」などの重要な働きがあります。
そのため、ホルモン補充療法は、女性ホルモンの低下によって起こる以下の問題に一定の効果が期待できます。
- 心血管系疾患のリスク上昇
- 骨密度低下と骨粗しょう症
- 膣・外陰の萎縮
- 皮膚のコラーゲン減少やうるおいの低下
ただし、加齢は複雑な過程のため、ホルモン補充療法だけでとめることはできません。また、ホルモン補充療法の効果には大きな個人差があり、若々しさを保つには基本的な生活習慣の改善も欠かせません。いつまでも若々しくありたい方は、十分な睡眠や栄養、適度な運動などをおこない、自分の身体をいたわることも合わせて考えてみてください。
なお、ホルモン補充療法を検討する際は必ず医療の専門家に相談し、個々の状況に応じた判断をあおぐようにしましょう。
デリケートゾーンのケアは【看護師が解説】更年期のデリケートゾーン(フェムゾーン)の悩みとケアの必要性で解説しています。
ホルモン補充療法のやめどきはいつですか?
ホルモン補充療法に「何歳までにやめるべき」という決まりはありません。医療提供者と定期的に相談しながら、以下の要因を考慮して決めるのがよいでしょう。
- 治療の継続により健康と生活の質が保たれているか
- 注意すべき症状が出ていないか
なお、注意すべき症状とは以下のようなものを指します。
- 乳房の変化や異常
- 不規則な出血
- 血圧の変化
- 血栓のリスク因子
- 年齢とともに変化する個人のリスクとベネフィットのバランス
本人は体調がよいと感じていても、医学的な理由で突然中止が必要になるケースもあります。
また、なかにはホルモン補充療法だけでは効果が不十分で、カウンセリングや生活指導によって体調がよくなる方もいます。個人差があるため、気になる点は医師へご相談ください。

ホルモン補充療法について気になる点は医師へ相談を
ホルモン補充療法は、1~2週間で変化を感じはじめ、数ヶ月で自分らしさを取り戻す方が多く見られます。ただし、身体の状況や生活スタイルによって効果が出にくい方や、持病によってホルモン補充療法自体ができない方もいます。
更年期のつらい症状は、自分で抱え込んで不安が増大すると悪化しやすいため、一度医師へご相談ください。
オンライン診療だから安心して相談できます
ビバエルのオンライン診療では、まずは看護カウンセリングで、症状を把握しながら、あなただけの状況をゆっくりとお話を聞かせていただきます。その後、更年期専門医が最適な治療プランを提示します。
なお、ホルモン補充療法に加えて漢方薬処方にも対応しており、体調や希望に合わせた治療を提案可能です。
現状を知るための看護カウンセリングのみの受診も可能です。更年期のつらい症状にお困りの方は、ぜひ気軽にご相談ください。
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特徴
- 時間や場所を気にせず相談できる
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